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茨城をテーマまたは舞台にした小説集です。小説 の舞台は、霊峰筑波、徳川光圀公の本拠であった 水戸、東国の武神を祭った大社を持つ鹿嶋など。 |
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ニューヨークのロックフェラーセンターは、各国の旗をなびかせる高層ビルのあいだにボッカリ とあいたというか、地下を四角に切り取ったような場所が印象的で、いつもは、若者たちがロー ラースケートをして遊んでいる。もうじきクリスマスなので、有名な、巨大なクリスマスツリー がたてられていた。 あるユダヤの長者が、ロックフェラーのオフィスにやってきて、秘書をとおして面談を申し込 んだ。彼はたまたま空いていて会ってくれることになった。 「突然でてきて会ってもらい恐縮です。こういう者です」 差し出された名刺にはフルートブランコとあった。全米で有名な企業家である。 「フルートブランコさんでしたか。気が付かずにすみません。ところで゛ご用件は」 「じつは、クリスマスツリーのモミの木に飾る、プラスティック製の、本物を真似た、モミとい う熱帯魚なんですがね、これはバプアニューギニアの長老に聞いたら、不老不死の霊薬になると か。モルジブか日本の大洗海岸しかいないといいます。今、あるドデカイ事業を構想中で、あな たに出資してもらいたい。そのお礼にモミをプレゼントしたい」 ここは茨城県の大洗海岸。フルートブランコの手配したダイバーがモミを探しに水中に飛び込ん 飛び込んでみると、海の底は、まるでハイビジョンのテレビを見ているようで鮮やか。紫色をし た石の上には、白いテーブルサンゴの団地。窓窓からは紺色やピンクのいそぎんちやくが顔を出 す。 モミの集団が遠くを行く、ラッキーにももう出会えた、とダイバーは思ったところが、恐ろしい ものが遠くからやってきた。 さめである。2匹いた。見つかる、そう思いながらとっさにサンゴの陰に隠れた。1匹のほうが 尾びれ付近から血を流し始めた。サンゴででもひっかいたのだろう。1匹が、おいしそうなにお いにちかずいて逝き、横腹をガブリとかんだ。かまれたほうもそのまま射るわけではなく、さめ 同士のけんかとなった。 またもや深く潜り、辺りは真っ暗となった。 背中のほうから、ボーッと明かりがさした。ありがたかった。しかし後ろを見ると、巨大なチョ ウチンアンコウがいた.鋭い歯で今にもかみ殺されそうである。しかし、ちょうちんをナイフで 破ると、びりびり体を痙攣させ、感電死してしまった。 ビンクのふわふわしたくラゲの集団にぶっ使った。刺されると一命を落としかねない。何せ大き いのだから。いいことを思いついた。風船みたいなものだから、携帯しているこれまたナイフで、 頭に穴を開けた。すると、シューと、しぼんでしまった。 これならいけるぞ、と、この場は切り抜けた。 しばらく泳いでいるとやっとモミの集団に出会えた。ところが、体に異常事態が発生した。何か にのみのみこまれたような振動を感じる。 鯨のおなかの中だ。おなかの中はプールみたいで、あっちへ吹き飛ばされ、こっちへ吹き飛ばさ れ、超強烈な船酔いのようである。そうだこの次、鯨がえさを飲み込むとき、空いた口のスキマ から逃出そう、そう思った。それで、それはうまくいったのだった。 モミたちもなんだろうと思って覗き込んでいた。良心には恥じるが、その中の一匹を掴みとり、
アーメンといって、バッグの中に入れた。
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