小説の茨城  茨城をテーマまたは舞台にした小説集です。小説
 の舞台は、霊峰筑波、徳川光圀公の本拠であった
 水戸、東国の武神を祭った大社を持つ鹿嶋など。
2004年4月号
 
 矢 作 幸 雄  影与力『不殺の剣』Vol.1


元禄三年(1690)霜月(11月)某日。
 徳川五代将軍綱吉の側用人柳澤出羽守保明は、江戸城中奥の御用部屋から帝鑑の間へと表坊主
の先導で足を運んでいた。
 間もなく七ツ半、寅の下刻(午後五時)であろう。冬のことで、各部屋に詰番の大名、旗本も
大方は退下し、大廊下を歩く人影もまばらであった。
 「こちらにお待ちでございます」と部屋係の表坊主の一人が襖をあけて側用人を招き入れた。
 其処には火の残る大火鉢が置かれ、茶を喫していた奥州磐城平城主安藤対馬守重博がポツリと
所在なげに座っていた居ずまいを正す姿があった。
 「お待たせいたしました。ようやく公務が片付きましたので………」
 「側用人どのには、お忙しい毎日であろうと存じ上げます。実は先般ご依頼のありました件で
  返事が届きました故、吉報なれば一刻も早くお話し申し上げたいと思いまして、連絡を差し
  上げた次第です」
 「吉報とは有難いことで、大きな声では申せませぬが、将軍家指南役の柳生流を別にして二流
  に打診いたしましたところ、いずれも人を斬るのが剣、殺さずに何とかといわれましても、
  ご返事申し上げる術がありませぬというわけで」
 「それがしもおそらくは、そのような回答が戻るのではないかと思っておりました処、殺さな
  くても良いのなら差し向けましょうとの意外な返事。これをどう思われますか」
 「逢ってみないことには分かり申さぬことながら、余ほどの自信がある様子、さすがは塚原ト
  伝を生んだ土地であり、対馬守様のお声がかりによってこそ、吉報を得られましたかと思わ
  れまする」
 「では早速に出府するよう申し伝えておきますが、大番頭に出頭すれば宜しゅうござるか」
 「左様に願い上げます。老中を通じて大番頭支配の与力の一員、影与力になろうかと思います
  が、病死の旗本の空屋敷がありますので、其処に入れようと思います」
 「お役に立てばと思いますが、それでは供も待っておりますのでそれがしはこれで」
 「忝なうございました」と柳澤出羽守は安藤対馬守を見送った。
 事の次第は少し遡る。
 元禄二年の春4月。朔日夜に旗本の子息が夜遊びの帰途辻斬りにあった。明くる日、立会った
検死役が驚くほどの達者な袈裟斬りで、斬られた子息は不甲斐ないことながら刀に手を掛けるこ
ともなく、一言も発せずに死んだという。もっとも月のない夜で武士にはあるまじく右手に提灯
を持っていたため、刀に手が掛からなかったらしいとは、燃え残りの提灯の様子で判明した。
 奇怪なのは斬られた場所が柳橋袂近くであったため、神田川を下る船頭が、
 「元年の恨みぞ!」という声をかすかながら聴いたという。
 そして翌元禄三年四月にも、近くの柳原広小路に於て辻斬りが発生し、これも御家人の一人が
斬殺された。どちらの場合も大橋袂の自身番の灯は見えるが真の闇に近い場所で、提灯を手にし
て斬られているので、武士を意識して襲ったことが明らかであった。両方共懐中物には手が触れ
られていない。
 元禄三年の斬殺によって、幕府への遺恨が明らかとなり、側用人まで話が上がってきた。
 柳澤出羽守保明は、元禄元年十一月十二日に、南部遠江守直政とともに側用人に命じられた。
『徳川実紀』には「柳澤出羽守保明これも御側用人命ぜられ。青江次吉の御刀たまひ。一万石加
秩下され。一万二千三十石になされ。座班は遠江守直政の上に着すべしと定らる」とある。
 柳澤保明は、五代将軍となった綱吉が館林藩士の時代に仕えていた百六十石の藩士であったが、
四代将軍家綱の死去後養子将軍となった家綱の弟綱吉に従って将軍直属の幕臣となり、将軍の身
辺雑務に当る小納戸役を拝命した。
 小姓時代から綱吉にはひたすら誠意を盡して奉公する姿勢をくずさず、小納戸役で実力を発揮
して幾度も褒賞を受け、遂に将軍側用人の地位を得た。
 綱吉は信賞必罰が明らかな将軍で、元禄元年十月に、牧野伊豫守忠貴、宮崎善兵衛重清の二人
の側用人を、奉公の志うすく其職に應ぜねばとその職をうばい逼塞を命じた。
 側用人は激務である上に特別な地位であって、将軍の意志を汲みとって直ちに老中に伝え処置
に移ることを要求されたものである。
 綱吉は将軍としてはじめて、元禄元年四月二十一日に臣下の側用人牧野備後守成貞の邸を訪れ
ている。いかに成貞が重用されたかよくわかるであろう。成貞邸にはその後も臨駕あらぬ噂まで
人の口に昇る。
 綱吉が極端な将軍として知られるのは、天下の悪報として知られる「生類憐れみの令―貞享二
年(1685)―宝永六年(1709)に幾度も出された」による。
 綱吉の生母桂昌院が綱吉の病中に加持祈祷した知足院権大僧正隆光が、
 「上様は戌の歳のお生まれで、犬を大切になされますが宜しいかと存じ上げます」とか焚付け
て、犬からはじまり、動物はもちろん魚鳥まで対象となった。
 元禄元年五月には鳩を石礫で追った子供が追放となった例まである。ただし、これは極端な例
が述べられたものであって、たとえば魚にしても儀礼的にはなんら変わることもなく用いられて
おり、牧野成貞邸に臨駕の際に成貞に鮮鯛、妻に檜重を賜う(元禄四年)とあって、魚屋が店仕
舞をするほど極端なものではなかった。無益な殺生を戒めるほどのものであろう。
 後世になって曲解される面が多いが、生命の尊さを将軍自らがこれほど大胆に示した例は空前
絶後である。
 側用人柳澤保明が苦慮するのは、この生類憐みの令に背く者を出さないよう心を配ることでも
あった。
 柳澤保明が安藤重博に依頼した件というのは、元禄二年同三年と続いた辻斬りに対処し、この
辻斬りを殺すことなく処置出来る剣の達者を探すことで、元和偃武この方残念まがら幕臣には剣
の達者は失せていた。そしてすでに地方の二流からは断わられていたため、鹿島は最後の願いで
あった。
 安藤重博に声をかけたのは、その祖安藤対馬守重信が鹿島神宮元和の大造営に際して奉行を仰
せつけられ、竣工の折には石燈篭を寄進するなど、鹿島の社人との関係をつねづね目を通してい
た記録から知ったことによる。
 吉報をもたらした安藤重博は、わざわざ居残ってくれて側用人に細やかさを示した。



 下総国(千葉県)佐原より、利根川添いに上流に延びる街道を松戸街道という。大利根を舟で
下った江戸からの鹿島、香取詣での人々が帰路に成田詣でをする街道でもあった。
 元禄四年の正月も末近い朝。其処此処に梅の花が咲いている松戸街道を、奇妙な一塊の旅人が
歩いていた。
 鹿島、香取両社の初詣客も藪入りの頃までで、農事にはまだ早いこの時期には、街道添いの田
畑にも人影はない。
 先を歩く二人連れは江戸の商人らしく、大店の主とみえる四十過ぎの男は羽織の裾から道中差
しの鐺がのぞき、供の若者も匕首は懐も呑んでいるようであるが、二人の影にはおびえがある。
 次を歩く三人の浪人は、見るからに強そうな髭面の大男と、なんの特徴もない痩身の、くたび
れた袴が塗りの剥げかけた大小刀をようやく支えている似たような二人で、どうやら前を歩く商
人主従を意識しているらしく、声高に話ながら歩いている。
 その後方―。やや離れたところを一人の若侍がぶらりぶらりと歩いてくる。
 奇妙なのは、商人主従の足が早まったり、後れたりするのに合わせたように、浪人三人の足も
同じ歩調となり、若侍も同じ間隔を置いていることである。
 先頭を歩く加島屋清兵衛は、江戸日本橋で口入れ業を営む働らき盛り、池端という変わった名
の若衆を供にしての鹿島詣での帰路であった。
 加島屋清兵衛は切羽つまっていた。恨みを受けるほどのことではないが、去年同業の一人が、
さる西国筋の大名の供揃えにしくじり、急な供揃えを肩替りしてどうやら恙なくつとめた清兵衛
に、意図したことがあったのではないかと、意趣を持ったらしい話を耳にしたことがあった。
 その意趣返しに、浪人を頼んだとすれば合点がいく。江戸を発った頃から舟中まで、浪人連の
影がちらと目に入っていたのである。
 おそらくー間もなく襲撃してくるに違いない。
 清兵衛は、一人を相手なら決して引けをとらないだけの度胸と腕を身に具えていた。池端にし
ても一対一なら切り抜けられるかもしれない。しかし、三人の武士を相手に二人では勝目がない。
後方にいる若侍に助勢を頼もうと足をゆるめても、決して間がつまらないのは、かかわりを持ち
たくないからなのであろうか。
 やむを得ないー。
 清兵衛は、恒例の鹿島詣での帰り道で襲われる自分が死を迎えるとは思えなかったが、身に降
りかかる火の粉は払わなければならないと戦う決意を池端にも伝えた。そして、
 「髭が先ずかかってこよう。強いのは髭だけで、あとの二人は大したことはない。儂が髭の一
  撃を道中差しで受けるから、匕首を髭の腹に叩き込んですぐ離れろ。相手が二人になればな
  んとかなるだろう」
 「はい、丹那様お気をつけて」
 やがて、街道がまっすぐになった処で、三人の浪人が一勢に抜刀して疾走してきた。清兵衛と
池端は振返ってそれぞれ道中差しと匕首を構えた。
 と、先頭を駆け寄ってきた髭面が突然衝撃を受けて前のめりにどうと倒れ、残った二人も走り
寄った若侍に当て身を喰らって昏倒した。一瞬の間であった。
 清兵衛はあっけにとられ、やがて、助かったと思わず膝を着いた。
 「有難うございます。生命を助けていただいき、お礼の申し上げようもござりませぬ」深々と
頭を下げる清兵衛へ、
 「いや、遅くなって済まない。いつ抜くかと思いながら、抜かない限り手助けもできないので
  心配をかけましたね」といいつつ、髭面の懐中より一枚の似顔絵を取り出して清兵衛に渡し、
髭の背に投げた丸石を拾って腰の袋へ落した後、浪人等の刀をそれぞれの鞘に戻した。
 「一刻は目覚めないでしょう。では参りますか」
 水際立った若侍の処置に清兵衛は胸を打たれた。自分の似顔絵を懐中し、これで顔が不明とな
れば、浪人も気付いたところであきらめるだろうと思った。
 「わたくしは江戸、日本橋で口入れ屋を営む加島屋清兵衛と申します。これなる連れは池端と
  申します店の若者で、二人で生命をお助け頂き有難うございました。ぜひご尊名をお聞かせ
  願います」
 「私は鹿島の社家、卜部吉川の一族で一伝と申します」
 清兵衛は、鹿島大明神がこの若者を遣わして下さったのだと確信した。
 今では大舟津へ泊まっているが、何年か前、鹿島門前町の宿へ泊まった折りに、宿の主人が、
 「この入小路の奥の卜部吉川家が塚原卜伝先生のご生家ですよ」と教えてくれたことを思い出
した。
 「卜部吉川家といいますと、あの塚原卜伝先生のご生家で………」
 「そうなのですが私は居候の身で、今回どうやら江戸で暮すことになり、出府の途中でした」
 「江戸はどちらまでおいでになられますので」
 「大番頭の邸を尋ねることになっていますが、番町がどのあたりか知りません」
 「番町は御城の西に当ります。大番組の旗本屋敷が並ぶので番町といわれますが、それでは御
  旗本になられますので、それはおめでとうございます」
 「いやいや、それはまだわかりません。田舎者ですからね」
 一伝は苦笑した。おそるべき辻斬りに対して「生命を奪うな」という命令に従う者などおそら
く他には一人としていないだろう。しかし、その命令は将軍という絶対者が宣言した生類憐みの
令を忠実に遵守しようとする誰かが願ったことであった。
 一伝が魅かれたのは、悪人といえども発令した以上生命を守っていきたいという決断であった。
斬られるかも知れないという危惧はある。けれども、負けるとは思わない自信もあった。
 それより、鹿島を離れたいーという意識が一伝の心を強く動かしたに違いない。
 決して嫌ではない故郷なのであるが。
 一伝は母の顔を知らない。一伝を生んで間もなく流行病で死去したと聞く。父もまた、探策に
出て帰らず、兄も元服後父の後を追って探策のため鹿島を離れ、孤独の生い立ちであった。父の
従弟である吉川忠右衛門真常の子である常栄、善五郎、吉十郎等と共に育てられた。
 常栄等の祖父清次は、一伝に対し、
 「お前はこの家を継ぐべき父の子とはいえ兄がいる。父と兄が戻っても、いずれは他家を継が
  なければならない定めなれば、剣を以て生きる外道はない。この吉川の家より出でた塚原卜
  伝のように、天下一の剣を目指せよ。卜伝逝って百年の歳に生まれたお前に、父は一伝の名
  を授けた。その心を大切にするが良い」
と教え、剣の型も物心のつかない頃より教えられ、八歳の血判入門の頃には見様見真似ができ、
元服の際には表太刀十二ヶ条にみならず、ほとんどの秘技を会得していた。
 元服の後、清次は一伝に、鹿島神宮の森に一千日の参籠を奨めた。
 塚原卜伝が第一回の廻国修業から帰国して、身も心も傷ついた折りに、吉川家と共に鹿島城の
宿老の一人で、剣の師であった松本備前守より奨められて参籠した例に倣ったのである。
 深山幽谷に起き伏して剣を磨くということは、同時に人間としての野生を極限まで発揮するこ
とであり、耳目をはじめ五感が研ぎ澄まされるのである。
 眼は星明かりで鮮明に物が見えるようになるとともに、耳は十間先の虫の這う音さえ聴き分け
られる聴力を得た。
 一伝は腕白の頃の仲間との石合戦では、常に適確に相手の身体へ飛礫を当てたため、一伝の相
手方になるのを皆が嫌がった。一伝自信は飛礫が目前まで飛来してから、ヒョイと身を拈って避
けた。
 一伝は同じ重さの丸い石を選んで貯え、その後も飛礫の習練を欠かさなかった。
 卜伝が、直弟子二名に命じて甥いである吉川晴家に伝えた剣法は、卜伝が鹿島の大神から授け
られた「心を新しくして事に当れ」という神言により、次の時代から「鹿島新当流」という名で
呼ばれるようになった。この戦国時代の剣法は鎧武者の弱点を衝く介者剣法であるが故に、戦の
絶えた江戸時代にあっては過去の流儀であり、鹿島に秘儀として残るものの忘れ去られた剣法で
もあった。



 下総木下の旅籠に一泊して語り合った三人連れは、江戸に入って別れ際に、加島屋清兵衛は吉
川一伝に、
 「落着かれましたらぜひ手前共へお越し下さい。お武家様に必要な供揃えも仕事の一つであり
  ますので、ご遠慮なくお申しつけ下さいますように」
 「忝ないことです。それではこれにて」
 まだ明日のことも知らない一伝は手短かに別れをつげて立去っていった。
 「池端、お前はあの吉川様をどう思う」
 「へぇ、何ともさわやかなお侍で、今どきのお江戸には勿体ないくらいのお方と思われるます
  が」
 「あのさわやかなさを失って頂きたくないとは思うが、どのような御番に当るのかねぇ」
 「店へもきっと見えますよ。なんてったって旗本になりゃ、人から先に必要なんですからね、
  丹那様のお力が物を言いまさぁ」
 神田川の堤が煙るように見えてきた。江戸の春も、もう近くまで来ているようだ。
 加島屋へ戻った清兵衛は、妻はるに吉川一伝に助けられたことを語り、いつかは恩返しをした
い旨を話した。
 その日は意外にも早く来た。数日後、昼過ぎに加島屋を訪れた肩衣姿の武士がいた。
 「あ、吉川様ではございませんか」
 目ざとく池端が声をかけ、女中に清兵衛を呼びに立たせた。
 「吉川様、ようこそお出で下さいました。さあ、どうぞ」と清兵衛は奥座敷へ招き入れ、かね
て話しておいたため早速茶が奨められ、妻はるも挨拶に出る。
 「清兵衛の女房はるにございます。この度は清兵衛の生命をお救い下さりまして有難うござい
  ました。どうぞごゆるりとして頂けますように」
 「これから清兵衛どのに厄介をかけることになり申す。よしなに願いたい」
 挨拶が済んで、一伝と清兵衛はを残して皆が退出すると一伝は、
 「加島屋どの、この店を暫し眺めていて、どうしても聞き入れて頂きたいと思うことができた。
  無理を承知で頼み入りたいと思うのだが、いかがでござろうか」
 「はい。なんなりと仰せつけ下さい。で、どのようなご用におつきになりましたので」
 「一応この店の中だけのことにして貰いたいが、旗本に加えて頂いた。そして与力を仰せつか
  った」
 「与力と申しますとあの八丁堀の………」
 「町方としては与力と申さば八丁堀であろうが、番方でも多くの与力がいて今回特別に影与力
  をとのことであった」
 「はあ、はじめてうかがいます」
 「大番頭同道の上、柳澤様の邸へ出向いたところ、辻斬りの生命を奪わずに辻斬りから手を引
  かせたい。其許には影の与力としてこのことに当って貰いたいとの仰せであった」
 「あの御側用人の柳澤様で」
 「大したお方と思った。将軍綱吉様が生類憐みの令を出されて、万の物の生命を大切にと心配
  りしておるときに、浅草御門近くでの二度の辻斬り。しかも元禄元年の恨みといえば、その
  年改易された大名は、信濃国長沼藩一万石佐久間勝親と、常陸国北条藩一万三千石堀田正英
  の二名。このどちらかの家臣であろうと思われる。些細は委せるが方策が建てば知らせるよ
  うにとのことであった。」
 「大名ご改易の恨みでございますか。大変なお役目でございますね
 「それで、浅草御門付近を歩き、日本橋へ来る道筋に考えてみたことは、浅草御門近くの長屋
  に浪人として住み、辻斬りに備えたいということ。辻斬りは二度とも月の無い暗夜であった
  というので、一と月のうち十日ばかりを充てれば足りると思う。そこで頼みというのは、こ
  の店なら武家で入って浪人姿で出ても目立たないと思い、着変えを月に二度させて貰えない
  か。勿論役目を果たすまでの間ということにはなるが、いかがでござろうか」
 「かしこまりました。お引受けいたしますが、お武家で来てすぐご浪人にはなれますまい。せ
  めて三日ばかりは月代を延ばし、無精髭もあった方がよりご浪人らしくなります。さいわい
  先代が使った隠居所の小部屋が空いておりますので、其処をご自由にお使い下さいますよう
  に」
 「忝ないことです。それにもう一つ、浅草御門近くの長屋の一間を借りて頂けませんか。半歳
  ほどは入用かと思いますので」
 「お安いご用です。早速手配させますが、吉川様いけません。武家は武家らしい言葉をお使い
  にならないとすぐ見破られてしまいます。ご浪人のときはご浪人らしく使い分けて下さい」
 「ははは、は。まだ武家にも浪人にも成りきれないので、追い追い使い分けましょう」
 「お屋敷の方は留守居とか、中間とかの手は宜しいのですか」
 「病死した前の屋敷主の用人が、夫婦でそのままつとめてくれるそうで、表立って出掛けるこ
  とのない限り、事足りるようですね」
 「もし、ご入用のときは声を掛けて下さいますように。何人でもなに向きでもすぐ揃うのが私
  共の商売ですから」
 「忝けない。宜しく頼みたい。ついてはこれは些少だが支度金として納めて貰いたい」
 一伝は懐紙に載せて金子五両を清兵衛の前に進めた。
 「吉川様。それはいけませぬ。私は吉川様のお為になることでしたらなんでもいたします。し
  かし、それは世の為に吉川様という影の与力をお助けするため、金をもうけには致したくあ
  りません」
 「まあそう申すな。加島屋の繁昌はわかっているが、これは柳澤様がお手許から支度金として
  下された一部。柳澤様から頂いたと思って店の者にも挨拶を頼みたい」
 「そうでございますか。ではお預かりして店の者にも披露いたします。長屋は早速明日手配い
  たしましょう」
 一伝は帰っていった。店前で見送った清兵衛は「ふーっ」と吐息を洩らし、大きな荷を背負っ
たような気がしていた。
 汀  安 衛 『カンパズレ』サンプル小説からの続編3 
半時、やがて火をめがけて青塚、遅れて荒井、津賀浜村の名主が駆け上ってきた。
 「割本−えれ−事になったな−」
半ば涙声で『助けて−』と言わないばかりの面をさげ、息も切れ切れに、すがる様な目が事の重
大さを言っている。
 境田の男衆にタカボリの篝火を頼み、前後策を相談したが話はまとまとまらない。
それ程、皆正気を失い、まだ信じ切れないでいた。
『朝霧人を喰う』は鹿島浦の諺である。
『あの春がすみはカンパズレの前兆だった』
悔やんだが、それは後の祭りであった。
 二十尺前後の大きさのクジラ一頭を沖で捕ればでおよそ五十両、運上、歩一等の年貢、賄いを
引いても浜はお祭り騒ぎの大漁である。寄りものでもたいへんな「金子」になった。
「クジラに−、クジラに−−な−命取られたな−」繰り返し、繰り返し言いながら涙にむせぶ。
磯なれ松に雪が僅かに化粧して来た。シケは納まらない。明日からの捜索と生業を考えると、ま
た涙が湧いてくる。堪えて堪えても、とめどもなく湧いてきた。玄蕃は涙声を堪え、風の具合か
ら銚子陣家に房総方面の手配を頼む飛脚を送り出した。老漁夫の顔が、言葉が見えなかった未熟
を思い知らされた玄蕃は静かに目を閉じ瞑想に入った。
 やがて目を明け年寄と女子衆に青塚の天妃神社、武井の甲頭稲荷や鹿島神宮に参詣、祈願を言
い渡し、旗本岩瀬市兵衛、正木大膳に早や飛脚を立てた。
 数日後、シケの収まった浜には老漁夫の亡骸が舟に下がっていた。
半年の過ぎた浜は、火が消えたように静かである。ただ寄せては返す波の音だけは同じように聞
こえた。
 何処からも、何処からも何の報せも無い。何処からも板子一枚、竿一本の寄り物の報せも無い。
 年の押し詰まった霜月十一日
 「ギャテ−ギャテ−ハラ−ギャテ−、」
 棚木村大福寺住職の読経が静かに流れる中、こらえ切れずに泣きだす若妻、無邪気に遊ぶ幼子
の声が老い松に響き、こだまし哀れ、惨めさを誘う。霜水寺本堂で村中の人が集まり供養が行な
われた。
 鹿角堂裏の石塔場には 『海死霊菩提 各霊位』の供養碑が建てられたのは三年後であった。
石碑には
 角折村   五十七人   漁船 三隻
 青塚村    十九人   〃  一隻
 荒井村   三十四人   〃  二隻
 津賀浜村   十八人   〃  一隻
 合わせて 百二十八人   漁船 七隻 が海に消えた。
今、石碑を返りみる人は皆無にちかい。
 後の世に『坊主のたたり』とも言われる海難は、クジラ取りに命を賭けた漁師達の惨めな結末
に終った。そして、老漁夫の「うめき」はうめきで終った。
昭和二十年代頃まで
  つのおれ−つんと出て−流された−
  あおつか−あみばこしよいだした−
  あらい  不祥
  はまつが−はまべの しろうさぎ−』
 子供たちの戯れ歌が最近まで聞かれた。
平成十三年は二百二年になる。有志により供養が行なわれたが、知る人は皆無である。
武井村名主重兵衛の日記の記述には遭難者数、天候等合わないところがある。他村の出来事と、
海岸と北浦側の距離が相違を見せたのかも知れない。
 荒井村慰霊碑には俗名の者、女の名前も見られ直接海難に係わった以外にも犠牲者がいた事が
充分に考えられる。      (了)

あとがき

 十一回にわたり『カンパズレ』を掲載した。
この海難は、起こるべきしておこった事故とも考えられる。背景には厳しい漁村の生活をかいま
見る。年貢、運上金、歩一、などの『税金』と水夫を養う網元の経済力が問われる。
 不思議なことにこれだけの犠牲を出したにも係わらず村の『行事』としての慰霊祭が記録に残
っていない事である。
 それは『坊主の祟り』の伝承が介在するとも思考される。
 7月号からは浜野 真砂氏の『海を煮る』を連載したい。
 北 川  吏 ―30才で逝った天才新聞人―『渡辺治の生涯』Vol.1
桜川の土手

水戸市桜川の土手、少年たちが下駄を鳴らして歩いていく。あたりは夕焼けで真っ赤。渡辺 高
橋君、君は何だって風邪で熱があるのに、期末試験などというくだらないものに執着し、教室で
ぶっ倒れたんだね。幸い校医が注射してくれて、回復くしたようだが。
高橋 聞きたいかい。それは君に負けたくないからだよ。才気走っていていつも僕のはるか前を
歩いている。そんな君に追いついて追い越す、それが僕の生きがいだからだよ渡辺 僕のことを
まねんでもいいさ。君のような恵まれた環境の人とは違うんだ。父が死に母も死に、兄弟とも死
別し、親類の寺門さんに面倒見てもらっている。そんな状況では、ひたすら学問を身に付け、早
く世に立つ必要があるんだ。
高 橋 それが君の強さの秘密か。
渡 辺 それはそうと、松木校長が紹介してくれた話、君はどうするんだね。
高 橋 ああ、福沢諭吉先生が、時事新報社を作るので、記者の養成のため、慶応義塾にただで
    入学させる、という話だろう。松木校長もこの話を聞いて喜んだそうだよ。水戸は、光
    圀公以来文学者の多いところ。文章に巧みな青年がいても不思議ではない。この話を松
    木校長は、校舎の廊下で歩きながら聞いたんだそうだよ。僕はこの話、ありがたくお受
    けするよ。
渡 辺 ぼくもそうする。先輩が読んでみたらよかろう、と持ってきてくれた、福沢先生の文明
    論の概略、あれは、馬鹿にならない書物だ。松木先生がだいぶ吹きまわした福沢熱、あ
    れは実体のないデマゴーキとは違うよ。福沢先生こそこの文明開化の幕開けに大きな力
    を振るわれるかただ。
梅が満開の偕楽園
婦人A なんてきれいな梅なんでしょう。でも育子さんに比べたら、この梅なんて、やすっぽい
    造花ですわ。治さん、育子さんはほんとに才色兼備で、機略縦横といわれるあなたのよ
    きパートナーとなるでしょう。
婦人B 治さんは、慶応から時事新報に入られ、今は都新聞を経営されています。ジャーナリズ
    ムの世界にすい星のごとくデビューされ、各新聞社を驚天動地に陥れています。本もた
    くさん書いていまして、政海の情波、欧州鉄血政策、花鳥水月、政法哲学などございま
    すわ。育子さんも、英語がご堪能で治さんのといっしょに、西欧の進んだ知識を翻訳し
    て日本のために貢献されることでしょう。  
婦人A 私たちがかつてにおしゃべりしていてもしょうがありませんわ。小鳥のさえずりがうる
    さくてやさしい眠りがやってこないことがないように、若い人は若い人でやってもらい
    ましょう。育子さん、大丈夫ですね。
婦人B じゃあ、治さん、あとはよろしくね。といって二人は去る。

 治  はじめまして。いろいろと誉められてこそばがゆいですよ。
育 子 こちらこそ、本物の私が隠れているようで、ペテン師と思われそうで怖いですわ。
 治  僕はこれまで女性には縁がなかった。水戸の漢学塾、水戸中学、慶応義塾、時事新報、
    男だけの世界に生きてきました。だからこそあなたがすばらしく見える。つややかな髪、
    ばら色のほほ、輝く潤んだようなひとみ、花のようなぬれた唇。すべてが僕の胸をとき
    めかす。
育 子 ご冗談いっちゃいやですわ。二十三歳のあなたには、輝く未来がまっていらっしゃる。
    西洋に追いつけ追い越せの時代に、あなたでなくてはできない大仕事がまっていらっし
    ゃる。報道という事業は、これからの時代に新しい意識革命をします。 
 治  ありがとう。そんな励ましが僕にとってどれほどうれしいものか。でも、あなたのかわ
    いらしい唇から漏れる言葉がどんなものであっても僕はうっとりと聞くでしょう。
育 子 初めてお会いしたのに、べらべらとはしたない女と思ったでしょう。でもいくらはして
    もこの胸の高鳴りを伝えることができなくて。
    <あたりを夕焼けが照らす。>
 治  ああ、もうこんな時間か。下の人力車までお送りしますよ。
育 子 ありがとうございます。
二人、去る。しばらくして治戻ってくる。
 治  ああ、今日はなんて素敵な日なんだ。世界中にあんな素敵な人がいるなんて。神様に感
    謝しなければ。恋というのはなんと甘くせつないものなんだろう。今わわかれたばかり
    なのに、もう会いたくなる。
    <黒岩涙香やってくる。>
黒 岩 副社長、どうも。水戸の梅を見ないかと、副社長のお誘いにのってやってきました。聞
    きしにまさる絢爛豪華な景色、ふくいくたる香りもすばらしい。きてよかったですよ。
 治  私は君に、都新聞にきてもらいたいと懇願した。月給も五十円は払うといった。五十円
    は大金ですよ。しかし、条件があります。あなたの小説を他の新聞に提供しないという
    ことです。私はあなたの手紙が部下の机に合ったので開いてみました。承諾の返事だっ
    たのですね。
黒 岩 僕は朝早く藤田組に言って英語を教えます。朝食はそのあとです。しかも食事後は、い
    くつかの新聞のため小説を書き、絵入自由新聞に出社し、論説を書き、他の記者の仕事
    も手伝って四十円にしかなりません。家族の生活がかかつていますからそれでもやって
    いましたが、都新聞で拾ってくれるならこんなありがたい話はありません。よろしくお
    願いします。
 治  今後の都新聞の方針だが、君に何か腹案はないか。
黒 岩 おおいにあります。
 治  どんなことかね。
黒 岩 花柳界のつやネタなどどうでもいいではありませんか。待合、芝居茶屋、茶屋、料理店、
    芸者屋、そういうネタばかりだ。優秀な社員なのに、取材だと称して吉原がよい。右田
    寅彦、井上笠園、片山友彦などの連中です。この広い世界、アジア、日本国中に起こっ
    ている森羅万象に、目をつぶって花柳界のつやネタはないでしょう。
 治  それは、まったく君の言うとおりだよ。政治論文、政治小説、それらがなければ新聞と
    はいえない。しかし、理想は理想だ。都新聞の社員と家族を食べさせなければならない。
    芸者、花魁について書けば彼女たちは義務的に買ってくれる。経営とは相手の弱みに付
    け込む、汚らしいものだよ。

病院の病室

 治  僕は育子さんを守るため、あなたの車に飛び込みました。おかげで僕と育子さんは無事
    だったけれど、あなたが、急ブレーキをかけて、むち打ち症になってしまいました。
麗 子 人は私を何とでも言うわ。侯爵家のじゃじゃ馬娘、男を男とも思わぬはねっかえり。私
    は、まだ日本で数台の自動車を水戸の街角で運転していました。うっかりわき見してい
    たのもいけなかったのでしょうが、気が付くと、あなたと育子さんが前にいました。
育 子 私もいけなかったんです。車などくるはずがないと思って、ふらふらと横断しようとし
    ましたから。 
 治  おいおい、被害者が加害者の弁護をしちゃいけないよ。
麗 子 治さんと育子さんとのご関係はどんなものなのなのですか。もう誰も立ち入る隙がない
    ほどのものなのかしら。シャム双生児のようにくっついて引き剥がすことも不可能なご
    関係。
 治  君とは関係ないだろう。
麗 子 大いにありますわ。この包帯(大げさにぐるぐる巻いてある)はどうしてくれるんです
    か。関係ないといわれるとますます関係ありそうですね。
 治  どうでもいいじゃないですか。それはあなたが、前方を確かめず、不注意だったから。
    それにそのグルグルまきの包帯はわざとらしいな。
麗 子 まさかペテン師だとおっしゃるのでは。なんでもない間柄と私を安心させ、ほんとは熱
    々の関係なのではありませんか。
育 子 もうやめてください。私がいけなかったんです。
 治  君は加害者なんだから、怒り心頭に発していなければだめだよ。
麗 子 こんな方より私のほうが何倍もよくってよ。父は知範事で水戸の支配者ですわ。水戸の
    人はだれかれ問わず父の前に額ずくのよ。あなたは、議員になりたくはなくって。第一
    回衆議院議員選挙に、立候補したくはなくって。三つのバンはあるの。カバンつまりお
    金、カンバンつまり知名度、ジバンつまり支持者、これらがなくって出るのはナンセン
    スですわ。
育 子 やめて頂戴、私は誰がなんと言おうと、治さんが好き。真心よりも、ダイヤモンドに引
    かれる治さんではありませんわ。  
 治  そう、そうだよ。よく言ってくれた。ありがとう。
麗 子 まーっ、いまいましい。でも育子さん、私は必ず治さんは奪って上げます。ウフフフ、
    ハハハハ、その日を楽しみにね。

東京の治の家

結婚式が行われている。たかさごやが歌われている。
紋付はかまの治、白無垢の育子。遠くから声がする。(女中の声)
 A  何をするんです、侯爵家のお嬢様。
 B  ビストルなどもって、およそ、おめでたい席に不似合いですわ。
麗 子 邪魔立てすると、おまえたちのハートにも鉛の玉が飛んでいくぞ。
    <麗子、障子を空ける。>みんな麗子に注目する。
麗 子 私は治さんが好きなの。こんな結婚式などめちゃくちゃにして差し上げますわ。育子さ
    ん、あなたには死んでいただきます。
育 子 ええいいですわ。私が死に、治さんのためになるなら、私は喜んで死にますわ。
 治  麗子さん、たとえ育子さんを殺しても、僕のハートをわしづかみにして奪うことなどで
    きないのですよ。たとえ天地が裂け人類が滅亡しても、僕たちの愛は永遠に残ります。
麗 子 フフフ、私の負けみたいですね。お二人がこんなに強い絆で結ばれていたなんて。私の
    入る隙間なんて一つもないんですね。今後永遠にあなた方の前には、現れませんわ、神
    に誓って。
と、麗子去っていく。
        ―30才で逝った天才新聞人―『渡辺治の生涯』Vol.2へ続く
 星  聖 夜 『忘憂珍文館』−短編評論集−

国際社会での見通し

8月18日、小泉首相はドイツのシュレツダー首相と会談した。シュレツダー首相は小泉首相の発
言の全てに賛成する。日本が北朝鮮を孤立させず国際社会に呼び込む戦略的アプローチは正しい
し評価すると述べた。また日本は拉致問題の解決で努力しており、日本の立場を理解し支援する
と述べた。またドイッはイラクに人道支援を行っておりこれを継続する。イラクの安定・安全確
保・民主化推進に大きな関心を持っていると述べた。そう新聞には出ている。これは非常に重大
な外交の一つの成果だった。ドイッは第二次世大戦を日本と共に戦った。あのヒットラーがドイ
ツは日本と組んだという歴史的な事実がある。

私もドイツを訪れた時に入国カウンターで呼び止められてしまった。その前の人はず一とパスポ
ートも何も見せないような感じでスースーと動いて前に行ったが私のところでストップと係員が
私を止めてしまった。私は日本人的な顔をしているのだろう、その日本人的な顔をしているのが
ユダヤ人だという。
私がユダヤ人と間違えられたのだろう。その係員はドイツで今でもユダヤ人を煙たく思っている
のかも知れなかった。しかし私がパスポートを提示して日本人だと分かるとドウモアリガトウと
言って通してくれた。このエピソードを見ても分かる通りに、日本は非常にドイツには友好的だ
と言うことが肌身で感じられた。

日本はヒットラーのドイツと同盟をむすび第二次世界大戦を戦ったのだ。その仲のよさがいまも
ある。日・独・伊だからイタリアにも仲よくなることが可能では。このように過去、日本が国際
世界中で同盟したり、条約を結んだり、何か関係のあった国は全て利用するということが必要で
ある。そして、国内にじっとしているのではなくくて国際的にそういう相手を歴史をひもといて
調べ、新しい視点で出掛けて行って味方になってもらうよう交渉することが必要である。ポーラ
ンドやチェコにも小泉首相は訪れたがヒットラーがポーランドを電撃戦で、血祭りに上げたとい
うことは周知の事実だし。チエコもヒットラーによって  支配されたという苦い歴史がある。
しかし、ドイツに対しては忠誠を今でも誓っているらしい。敗戦国としてドイツの影響力を受け
ているらしいのだ。だからこの同盟や条約の関係国であったその相手国のその又関係ある国とい
うふうにねずみ算的に味方を増やしていくことはこれからは必要なのである。しかし、アメリカ
の頭ごなしはダメだ。あくまでも腰を低くしておうかがいを立てるように。
 南 洋 詩 郎(ゲスト)パロディ最後の晩餐
茨城県の鹿嶋市にハマナス公園があり、そこでは世界中の複製画が見られます。最後
の晩餐もありましたのでパロディを書きました。

エルサレムにきたキリストをユダヤ人が殺そうとする。
一枚板のテーブルには白いテーブルクロス.後ろからは明るい日差し。両横の壁には、何枚かの
宗教画。
オレンジ、ブルー、ベージュなどの法衣のような服を着ている男女十二名。
  A   このパンは腐っているぞ。
  B   おれのパンはチョコレートパンなので、虫歯にしみるワイ
  C   ぶたまんじゅうならいいと思いますが、これをどうぞ。
キリスト ユダお前は私をユダヤに売りはらおうとしていることも知っている。
     このパンこそ私の肉、それを一般のものと同じに考えられず、本物の私の肉が食べた
     いのだろう。お前は元人食い人種の息子だろう。違うか
 ユダ  とんでもありませんよ。何かの誤解です。
  A    お前、肴にお好み焼き、作れ。
 ユダ  へい、わかりやした。
キリスト ここに揃えられているのは私の血がはいったワインだ。みんな行き渡ったかな。
     それでは乾杯しよう。あ、ユダはでていけ。お前の母親の先祖は吸血鬼だろう。
     それでは、人類の平和と幸福のために、乾杯。  
 一同  乾杯。
 若 山  京 太 郎(ゲスト)ロボット宮本武蔵  
若山今日太郎(ゲスト)ロボット宮本武蔵
北海道の大講堂では宮本武蔵生存その可否を問うというテーマでシンポジウムが開かれていた。
45〜6才になるチャレンジャーという博士は宮本武蔵は生きているという立場をとって論陣を
張っていた。「えー 皆さん 宮本武蔵は佐々木小次郎と巌流島で決闘しましたね あの巌流島
は舟島という島ですが、佐々木小次郎がツバメ返しという流派を編み出し厳流と呼ばれていたこ
とからあの島をそれにちなんで巌流島と呼ぶようになったのです 今村健之助と吉本新太郎とい
う二人の立会人がこの試合を見届けますが彼らは21世紀に送った時間管理局員なのです。そして
どちらか勝った方を21世紀に連れて帰る予定だったのです しかし佐々木小次郎はこう言いまし

『細川藩の藩士に兵法を教える佐々木家の小次郎、私を宮本武蔵を使って抹殺しようという計画
を練っているらしいのです。だからもしも私が宮本武蔵に勝っても私は許そうとはしません。あ
らゆる手段を講じて抹殺するでしょう』そう小次郎は言った。」宮本武蔵は壇ノ浦から舟で舟島
へと向かっていた 海の沖はなえでいる そして舟頭も熟練した漕ぎ手であってみるみる舟島に
近づいてきた
『旦那 本当に勝算はおありで』
『いやー 分からぬ』
『否 でも厳流の太刀と比べれば空恐ろしい』
『じゃ どうするおつもりで』
『それを今俺も考えておる』
『例えばこの櫂を木刀にするとか』
『成る程それは良い』
では言って目を閉じて懐から小刀を出すと小刀で櫂を削り始めた。
『なかなか良く出来上がった』
と言って宮本武蔵は海中から飛び上がってくる飛び魚をその木刀で切ってみた スパッと飛び魚
は半分に切れた
『うん これは良い』
と言っているそこへ舟頭は櫂を握りしめて宮本武蔵の頭を目掛けて櫂の刀を振り下ろした 宮本
武蔵は
『う〜ん』
と言ってそのまま倒れ込んでしまった この舟頭はロボットだった。そして胸のボタンを自分で
押すと目の前の人間にそっくりの表情と体に生まれ変わることが出来る 宮本武蔵が出来上がっ


そして舟を漕ぐ力にも異常な馬力があるので速く加速し まるでモーターボートのような勢いで
舟島へと向かって行った 佐々木小次郎はその舟を見て
『遅いぞ武蔵 怖じ気づいたか』
と声を張り上げたロボットの宮本武蔵は舟を飛び降りて波打ち際に駆け出して行った
『こい 武蔵!』
と言って小次郎は長剣の鞘を抜き払って真剣を構えた。宮本武蔵は太陽を背に渚を走った。佐々
木小次郎も砂煙を上げて波間を駆け出していった お互いに詰め寄って勝負すると見せかけるや
宮本武蔵は空中に飛び上がって空中から櫂を振り下ろした 何しろロボットの馬力である並みの
男の数十倍数百倍ある力で振り下ろすのだからたまらない もの凄い早さで佐々木小次郎の頭蓋
骨を砕いた 佐々木小次郎は何ら防御する手だてのないまま一瞬のうちに倒されてしまった
『おう 見事 宮本武蔵』
今村健之助と吉本新太郎はそう言って駆け寄って行った 
『しかし私は本当の宮本武蔵ではない貴方達と同じ時間局から送られてきたロボットの宮本武蔵
です今居るのは吉本殿貴方方は21世紀の江戸時代に送られてきた時間を守のが仕事の時間、歴史
を曲げてあらぬトラブルを防止するという時間局員の任務に就く時間局員であること知っていま
す。だから私はこうしてロボットとになって貴方達と同じように もしも間違って宮本武蔵が負
けたらしょうがないと思ってこうしてやって来て戦ったのです』
と言って胸のボタンを押した すると金属製のロボットに戻っていった
『宮本武蔵殿は此処でのびて居ますよ』
と言って舟を指した。今村は
『おお これこそ宮本武蔵!』
吉本は
『じゃ 彼を空間ワープカプセルを使って北海道の海底都市へでも送り込んでおきましょう』
と言って、掘っ建て小屋から
『エイ!』
と二人で連れて行ってガラスで出来たカプセル状の入れ物に宮本武蔵を入れて北海道の苫小牧に
送ることを決めた」
と博士は話を終えた。

ですから、苫小牧へ行けば宮本武蔵の氷漬けがあるはずです。そしてその氷を解かせば今でも宮
本武蔵は復活してこの21世紀の世界に日本に生き返ることが出来ます
みんなはここで
「ははは」
と言ってさも馬鹿馬鹿しいというようにして相手にしなかった。その後チャレンジャー博士は歯
ぎしりをして壇上を降りた。そしてコートを脱ぐとロビーで煙草を吸った。興奮した気分を和ら
げるための一服でもあった。そこへ中年の如何にも金持ちの2世というようなひげを蓄えた痩せ
こけた男がやって来て
「チャレンジャー博士貴方の説は素晴らしい 私が金を出しましょう だから博士はその苫小牧
の海底都市に行って頂きたい」
「えっ 貴方がお金を出す?」
「そうです 必要なものは全部買ってください」
「え〜 取り敢えずタイムマシンに一台必要です」
「じゃそのお金はらいますよ」
「そうですか」
よ言って博士は頬をバラ色に輝かせた。

数日してその男はチャレンジャー博士の研究室にやって来ると
「どうですか タイムマシンは手に入りましたか?」
「はい ここに有ります」
と言って布を取るとピカピカのカプセル用のタイムマシンが現れた。これは空間ワープカプセル
と違って空間を超えるだけではなくて時間つまり歴史をひとまたぎすることが出来る。しかし見
た目はカプセル状で普通のカプセルと大差なかった
「じゃ行って来ます」
と言ってチャレンジャー博士はボタンを押してハンドルを切った。星が沢山見えて帯となって流
れ去って行った。そして暫くすると苫小牧の海底にある海底都市へと到着していた。そこは未来
の都市という感じで、動く道路が高速で走っていた。道路は動くのだが、あらゆる方向に行ける
ように重なって違う方向に乗り換えることが出来た
「ほう 見事なもんだなこれは 便利だ」
と言ってチャレンジャー博士はデパートの方へと向かって動かされて行ったそしてデパートの前
の歩道に乗り換えるとそのまま黄昏に吸い込まれて行った。ところがその帰りに道路歩道に乗る
と、一杯飲みたくなって飲み屋へ向かって居酒屋の並んでいる建物の方の歩道に乗ることにした。
何が原因か分からないが道路は減茶苦茶な動きをしてケーキ屋の方へと博士を連れ去って行った
扉を開けると
「ここは 居酒屋だな アルコールを一杯くれ」
と言おうとするとデコレーションケーキが飛んできて博士の顔をべちゃっとその生クリームで汚
してし
まった。博士はビックリした。
「なんて事するんだいお前たち」
「あ− すいません今ちょっとビデオを撮っていたもんで これ4月4日のエーブリルフールに
上映して馬鹿馬鹿しさを笑おうとしているんですよ あっ 貴方はお客様ちょっとはやすぎまし
 たね」
後ろからその目的の人物が来るのでした
「馬鹿にしやがって」
そう言って博士は道路に乗った。そして今度こそは飲み屋へと連れて行くことにした。それより
も又お
菓子が食べたくなったので洋菓子屋へと向かうことにして、ようやく動く歩道に乗った。店に入
ると
「クッキーをくれと言った」
「何を 九鬼を?」
「クッキー」
「なにお 九鬼をくれ?九寃というホステスの名はここにはねえぜ馬鹿にしやがって」
と言ってチャレンジャー博士を蹴飛ばして叩きだした。
「ああ ここは居酒屋か 俺は洋菓子を買いに行ったんだった クッキーと九寃、そうか俺はい
ないホステスの名前を呼んでしまったんだなあ」そう思った。この海底都市には中世風の城があ
った。
「おや こんな処に城がある何だ何だ入ってみよう」

そう言って一歩中へ入るとガラスの壁が全面に張られていてガラスのシャンデリアが見事な光輝
かしい
輝きを辺り一面に光らせそのピカピカに磨かれた廊下を歩いて行<事が出来た。そうすると執務
室みた
いな所があって壁一面に宗教画みたいな見事な写実主義的な羊飼いの少女やに似た絵が神々しく
しかし厳格な気分にされるようにしつらえてあった。さらにチャレンジャー博士はその部屋に来
ると
「宮本武蔵の秘密はこの部屋に有りそうだ」
と言って机や本棚をあさり始めた
「あら、何をなさっているんですか貴方は?」          .
と言って美しい女性が入ってきた.彼女はケニフアーと育ってこの城の持ち主だった。
「あら お客様なら丁度良かったわ私達は今ティーを飲んでいるところよ良かったら貴方も」
と言ってチャレンジャー博士にティーを勧めた。

そのティーを飲むとチャレンジャー学士はコックリ
コックリと居眠りを姶めてしまった。睡眠薬が入っていたのだろう。そしてチャレンジャー博士
は暫く
すると海底の景色が透き通って見えるガラ張りの場所へとでた。魚が天井を泳いで行<のが分か
る。
空に海の底があるのだから何だか変な気持ちだ。そして側では炎が燃えている青白い炎がまばゆ
い明る
さで燃えている。
「博士お目覚めですか?ここはね原子力で太陽が燃やされている一番真下のところです。このよ
うに
炎の周りを風が回って侵略者を防いでいます」
「しかしあのノストラダムスが初世紀の10巻72番には次の様な詩がありますよ」
“1999年7月の月 恐怖の大王が天より降りたつアンゴルモアの大王を蘇らせその前後が幸運に
助けられ……。”
「そう言ってますね あのノストラダムスの言う紀元21世紀がなんですがノストラダムスの世界
と私達の世界は時差があります つまり地上の世界では1999年がこちらでは2003年なんです 
4年の差違いがあります だから今年の9月に何らかの悪い事故が発生して壊滅的な打撃を受け
るということは、はっきりしています」                      
「日にちも今日じやないですか」
「そうです今日です おそら<天から隕石が落ちて来てこのガラスの壁が破れて水が溢れ込んで
くる そして弘達の都市は水中に敢えなく沈んでしまう」
「えっ そんな」
「だから貴方にはこの宮本武蔵の氷の像を持って行って頂きたい」
「ああ そう言うことなら分かりました」
「ぜひお願いします」
「ああ 分かりました」
そう言っていた時に もうこの太陽は輝くことが出来ないかも知れない。
「私がこの太陽に活力をあげます」
そう言って彼女は全裸になった
「私の皮膚はウランの成分と似ているのです この太陽は原紙力で動く ウランは黄色い粉末状
 の物ですが 私の体を粉々に砕くことによって ウランとして原料が供給され原子力は又輝き
 を戻し始めます」
そう言って 彼女は太陽に吸い込まれて行った。見えないパイプをたどってその太陽から原子力
の設備へと吸い込まれていくのであった。太陽は又輝きを取り戻した。
「そういうことならそれで この宮本武蔵の氷の像を」
と言って定まった氷の像を今度は空間ワ一プカプセルへとその氷の像と一緒にそこ飲み込み海底
都市を脱出した。丁度その時隕石が天から降って来て海中でじゅっと溶けガラスの壁を破って
その都市は海中の藻屑と化していった。その隕石というのはもの凄い数で、火が焼かれ、まるで
火山の溶岩のような層を重ねたようなものを一固まりに固めたような隕石でもの凄いものだった。
ヤレンジャー博士はやっと脱出したがエンジンがおかしく、それは空間ワープカプセルがやはり
隕石に当たって動かなくなつてしまった。そうしたところが大洗へと向かうフェリーがやって来
て私達は助けられた。途中で氷が溶けて宮本武蔵は復活していた。”蜂の武蔵は死んだのさ
お日様に焼かれて死んだのさ 蜂の武蔵は死んだのさお日様に焼かれて死んだのさ”という歌が
掛かっていた。
「え 宮本武蔵? え 武蔵 蜂 死んだ? 一体俺は誰なんだ 何をしていたんだ」
宮本武蔵が現代に蘇ったが過去の記憶を忘れ去っていた。しかしその歌を聴くと
「そうだ 俺は佐々木小次郎と決闘しようとしていた」
「そうですよ」            
とチャレンジャー博士が横合いから口を扶むように言った。
「貴方は佐々木小次郎と試合するはずだった。しかし代わりにロボットがして佐々木小次郎は仕
 留められた そう言うことなんです」
「え 佐々木小次郎が仕留められた 俺が戦う相手は佐々木小次郎だ」
と言っている時放送で
『ホウジロ鮫が出ます。皆さん海から外へ上がって下さい』
と言うアナウンスが流れて来た。
「何 ホオジロザメ? ホオジロというのは小次郎のことじないのか?よし俺が」
と言って宮本武蔵は舟を漕いで沖へ乗り出して行った。宮本武蔵は小次郎と決闘するということ
だけが頭にあってその決闘がもう終わったものだということを信じられないでいた。そして彼の
態度は粗暴そのものだった。花火をしている子供たちの親子連れを
「うるさいから止めろ」
と言って怒鳴り散らしたし、音楽を掛けて踊っていた男女を睨み付け
「うるさいから止めろ、止めぬのなら刀のさぴにしてくれるぞ」
と言って脅したりしたのだった。全くちょっとクレイジーだったな、決闘のことだけしか頭にな
かった
のだった。そしてそのホウジロザメを刀のさびとして切ってきたということを帰ってきて彼によ
って告げられた。
赤 田 大 波(ゲスト)モミの冒険
ニューヨークのロックフェラーセンターは、各国の旗をなびかせる高層ビルのあいだにボッカリ
とあいたというか、地下を四角に切り取ったような場所が印象的で、いつもは、若者たちがロー
ラースケートをして遊んでいる。もうじきクリスマスなので、有名な、巨大なクリスマスツリー
がたてられていた。
 あるユダヤの長者が、ロックフェラーのオフィスにやってきて、秘書をとおして面談を申し込
んだ。彼はたまたま空いていて会ってくれることになった。
「突然でてきて会ってもらい恐縮です。こういう者です」
 差し出された名刺にはフルートブランコとあった。全米で有名な企業家である。
「フルートブランコさんでしたか。気が付かずにすみません。ところで゛ご用件は」
「じつは、クリスマスツリーのモミの木に飾る、プラスティック製の、本物を真似た、モミとい
う熱帯魚なんですがね、これはバプアニューギニアの長老に聞いたら、不老不死の霊薬になると
か。モルジブか日本の大洗海岸しかいないといいます。今、あるドデカイ事業を構想中で、あな
たに出資してもらいたい。そのお礼にモミをプレゼントしたい」
ここは茨城県の大洗海岸。フルートブランコの手配したダイバーがモミを探しに水中に飛び込ん
飛び込んでみると、海の底は、まるでハイビジョンのテレビを見ているようで鮮やか。紫色をし
た石の上には、白いテーブルサンゴの団地。窓窓からは紺色やピンクのいそぎんちやくが顔を出
す。
モミの集団が遠くを行く、ラッキーにももう出会えた、とダイバーは思ったところが、恐ろしい
ものが遠くからやってきた。
さめである。2匹いた。見つかる、そう思いながらとっさにサンゴの陰に隠れた。1匹のほうが
尾びれ付近から血を流し始めた。サンゴででもひっかいたのだろう。1匹が、おいしそうなにお
いにちかずいて逝き、横腹をガブリとかんだ。かまれたほうもそのまま射るわけではなく、さめ
同士のけんかとなった。
またもや深く潜り、辺りは真っ暗となった。
背中のほうから、ボーッと明かりがさした。ありがたかった。しかし後ろを見ると、巨大なチョ
ウチンアンコウがいた.鋭い歯で今にもかみ殺されそうである。しかし、ちょうちんをナイフで
破ると、びりびり体を痙攣させ、感電死してしまった。
ビンクのふわふわしたくラゲの集団にぶっ使った。刺されると一命を落としかねない。何せ大き
いのだから。いいことを思いついた。風船みたいなものだから、携帯しているこれまたナイフで、
頭に穴を開けた。すると、シューと、しぼんでしまった。
これならいけるぞ、と、この場は切り抜けた。
しばらく泳いでいるとやっとモミの集団に出会えた。ところが、体に異常事態が発生した。何か
にのみのみこまれたような振動を感じる。
鯨のおなかの中だ。おなかの中はプールみたいで、あっちへ吹き飛ばされ、こっちへ吹き飛ばさ
れ、超強烈な船酔いのようである。そうだこの次、鯨がえさを飲み込むとき、空いた口のスキマ
から逃出そう、そう思った。それで、それはうまくいったのだった。
モミたちもなんだろうと思って覗き込んでいた。良心には恥じるが、その中の一匹を掴みとり、
アーメンといって、バッグの中に入れた。