小説の茨城  茨城をテーマまたは舞台にした小説集です。小説
 の舞台は、霊峰筑波、徳川光圀公の本拠であった
 水戸、東国の武神を祭った大社を持つ鹿嶋など。
2004年5月号
 
 矢 作 幸 雄  影与力『不殺の剣』Vol.2


 柳橋広小路近くの米沢町源兵衛店の裏長屋に一人の浪人が住むことになり、日本橋の口入れ業
加島屋の手代が連れてきたのは、元禄四年の二月下旬であった。
 なんでも、月のうち二十日はさる大店の用心棒をつとめ、残り十日ばかりの住まいとするのだ
と、鳶人足の左平次は聞いた。浪人は長屋の一番手前に入り、隣が左平次、三軒目がぼて振りの
三次。奥が易者の甚内。この三人へ挨拶の手拭を持って、高島太郎右衛門と名乗る浪人は、
 「拙者、暫らくこのお長屋にご厄介になり申す。留守勝ちだが宜しくお願いしたい」
と、若い割には丁寧な口調でいった。
 古着屋の下がりを買ったらしい黒羽二重の色あせた袷の着流しに鼠色の帯、漆のはげかけた大
小を差し、月代も延び加減、髭も無精髭だがまだ二十歳過ぎの、瞳が黒々と若い浪人である。
 加島屋の丁稚が敷布団と掻巻、箱枕、それに行荷一つを荷車に乗せて運んできて引越しは終っ
た。
 こちらの長屋は男一人の住まいばかりだが、泥溝を距てて向かい側の長屋は家族持ちや女の一
人住まいで、昼夜とも賑やかである。
 「ねえねえ、昨日、左平次兄いの隣へ入ったご浪人さん。高島太郎右衛門って名乗ったそうよ。
お若いのにちょっと可哀想な名前じゃない」
 「髭を生やして薄ぼんやりに見えるけど、なかなか良い男だってね」
 「それが行燈もないんだって、夜真っ暗闇の中でなにしてんだろうね」
 朝の井戸端は女房たちのおしゃべりで賑やかだが云うことは的を射て辛辣だ。
 床の中で一伝はにやりとした。通常なら聞こえる筈もない会話を一伝の耳は確実に聴いている。
行燈が無くても不自由ではないが、異常に見えてはならない。今日は行燈と油を買って置こう。
一伝は起き出して袷を着直し、手拭を下げて洗面に井戸端へ行った。
 「おはようございます。皆さん。左平次兄いの隣に入った高島です。どうぞ宜しく。あ、それ
から行燈を置き忘れてきてしまい、昨夜はひどい目にあいました。行燈を売っている店を教えて
もらいませんか」
 女たちも「おはようございます」といって
ひとりの年増が
 「行燈なら広小路を南に入った横山町の万屋に売っていますよ」
と教えてくれた。
 「有難うござる。それでは後ほど買って参ることにしよう」
 桶もないので手拭を濡らして顔を拭いた。裸にもなれないので手拭を入れて胸を拭き、背は拭
けないのであきらめ、
 「それでは皆さん、お先に」
と帰って障子を閉めた途端、井戸端では、
 「ワッ」と爆笑が起った。姿が見えなくなるまでこらえていたのであろう。それから少し声を
ひそめて話はじめたが、一伝の耳にはすっかり聴きとれた。
 「良い男だよ。だけど行燈を忘れるなんざあんまり頭の方は良くないね」
 「でも、あたしは可愛いいと思う。若い男さ、行燈なんて昼間の明るいときは気がつかないの
が当たり前。可愛がってやろうかな」
 「おひで姐さんが可愛がったら融けてなくなってしまうんじゃないの」
 「ばか、融けるもんか。あの腕の強そうなところ、おひで姐さんの方がつぶれて仕舞うよ」
 「いいかい。亭主持ちが亭主おっぽり出して手を出したら承知しないよ。おひでにしても高島
さんが狂うような真似はさせないよ」
 「冗談、冗談だってば。十歳も歳下じゃないか。柳橋渡れなくなるようなことはしませんよ」
 一伝は江戸の女のあけすけさが気に入ってきた。こうして楽しく暮らしているのだ。



 柳橋広小路は万治二年(1659)に掛けられた大橋(両国橋)の西袂に広がる。火除地としての
役目もあって広さはあるが、見通しが良いとはいえない。柳橋に至る柳原などの家並が浅草御門
を遮る。それに柳の木があって人を隠す。
 「辻斬りには似合いの場所だな」と一伝はつぶやく。広小路の南の源兵衛長屋の先は武家地と
なり、万石大名の上屋敷、下屋敷、それに御家人の小さな屋敷が並ぶ。この武家地から柳橋に遊
びに出て、帰途に襲われたのであろう。
 日本橋、横山町の方から大橋を渡る人の波は絶えることがない。また、本所の方から渡ってく
る者も多い。江戸の殷賑を一伝は今更のように感じた。
 広小路を一周して、源兵衛長屋から広小路へ出たところの柳の木附近が見通しが良いことを知
った。辻斬りはおそらくこの辺に潜んで柳原の方から現れる武士を狙ったのであろう。
 その辻斬りを見張るのに都合の良い場所に蕎麦屋があった。
 縄の暖簾を割って入る。
 「いらっしゃあい」小女が声をはり上げて迎えた。昼には少し早く、小あがりに客は一人だけ。
 「かけを頼む」といって店内をそれとなく見る。小あがりが二席。あとは四人掛けの木卓二卓
と輪切りの木椅子。その椅子で喰べた蕎麦は熱く美味かった。
 昨日のおそい昼を喰べてから、なにも口にしていないことに気づいた。
 量はどうでも、夕食は少しの酒と肴が欲しい。
 「左平次兄いに、うまい店を教えてもらおう」と、一伝は横山町へ向いながら考えた。
 小さめの行燈を求めたところ、火打石と打金を付けてくれた。火口と芯は付いている。油は別
に買う。そしてぶら提灯と蝋燭を求めてが両手を使ってしまうので、仕方なく提灯は後の腰に差
して歩いた。
 長屋へ戻ると皆が笑っている。粋な着物姿のおひで姐さんが、
 「丹那、万屋の丁稚に鐚銭の少しもやって運ばせれば良いのに、横山町からここまでの通りで
源兵衛店のご浪人はもう有名になってしまいましたよ」
 「そうか。それは不味かった。自分の物は自分で持つ癖は直さなければならないな」
 「いえ丹那、二本差しが提灯まで差したのを、江戸っ子ははじめて見たので笑ったのです。も
う、じれったいのだから、丹那は」
 「そうか、前からは見えないから良いかと思ったのだが」
 「江戸は半分の人が後を歩いているのですよ。もう世話の焼ける………」
 「済まん」
 「あたしはもう出掛けますからね。あんまり笑われないで下さいね」
 「気をつけよう」
 目立たぬように提灯まで求めたら、逆に目立ってしまったことは仕方がない。いや間抜けの印
象を与えてしまったのかも知れない。
 一伝は自分がまったくの田舎物であることを思い知らされた。左平次を待ち、夕食にさそった。
左平次は近くの煮売屋(一膳飯屋)へ案内し、
 「俺っちの隣へ越してきたご浪人の高島さんというんだ。よろしく頼まぁ」
と紹介した。
 「へぇ、おいでなさいまし、なににいたしましょう」
 「けっ、なににいたしましょうもねえもんだ。できるもの、みな持ってきねぇ」
 一伝はまた驚く。大雑把な注文だからだ。しかし理はにかなっている。魚河岸でその日獲れた
一番安価な魚を仕入れ、二品ばかりと野菜の煮物を商う店だ。酒も注文した。
 長腰掛の端に腰を下ろし、間に塗折敷(平膳)を置き、向いあう。
 「丹那。向いの奴ら、五月蠅いでしょう」
 「いろいろ教えられている」
 「気にしちゃ、いけませんぜ。おひでなんざ口ではぽんぽんいうが、気はいいんだ」
 「姐さんには叱られたが、なにしろ田舎者だからなぁ」
 「丹那は魚の喰い方が上手いなぁ、猫が泣くかも知れねえな。俺っちの喰うところがねえーと
な」
 「江戸ほどではないが、海のそばで育ったからだろう。兄いはどちらだ」
 「王子の先の方さ。百姓の二番目なんざ、穀つぶしで、今じゃ足場組み人足さ」
 「もう一本いかないか」
 「明日、高いところでふらふらしちゃいけねぇ。一本で充分でさあ」
 「さすがは鳶の兄い。えらいなあ」
 「高島の丹那。大きな声ではいえねえが、丹那は仇討ですかい」
 「どうして、そう見えるのかな」
 「ふつうのご浪人は気の張りがねえのさ。丹那にはそれがある。剣術の方も相当いけると俺っ
ちは睨んだが、違いますかい」
 「田舎からでてきたばかりだ。気も張らなきゃ、姐さん方にの叱られよう。剣術の方は叩かれ
てばかりだよ。ハハハハ」
 勘定は一伝が払った。二人で二百文と安い。生類憐みの令で魚の価値も下り気味なのであろう。



 五ツ(午後八時)を廻った頃、一伝は長屋を出た。木戸を静かに押して通りへ向い、柳橋広小
路へ出る。
 表通りはさすがに、提灯を持った人影が時折通り過ぎる。一伝は昼の蕎麦屋の前に立って、暫
し目を閉じる。そして目を明けると真の闇でも物が見えてくる。
 辻斬りが身を隠すのに都合が良い柳の木が目前にある。大橋際の自身番の灯が小さく光り、そ
の光が柳の木の影を浮び上らせる。
 静かに刻が過ぎていく。
 一刻ばかり過ぎた頃、柳原から提灯が二つ現われ、やがて広小路を渡って近づいてくる。男と
女の二人連れで、広小路を渡り切ると、
 「富さん、有難りうよ。気をつけてお帰りなね」とおひで姐さんの声。
 「有り難うございます。それではこれで」といくばくかのおひねりを貰った男衆が来た道を帰
っていく。絵のような光景である。おひでは源兵衛長屋の方へ姿を消す。更に一刻ばかり過ぎる。
もう殆ど人通りはない。
 江戸は深い闇の中に沈んでいる。自身番でも番太郎が、こくり、こくりと居眠りをしているの
であろう。
 一伝は蕎麦屋の店先を離れて、源兵衛長屋へと帰っていった。
 こうして数日が過ぎ、細いながらも月が昇ってきた。一伝は左平次に留守になることを話し、
日本橋の加島屋へと戻った。
 「お帰りなさいまし、さぞお疲れのことでございましょう。三度のご飯の方はどうされました
か。ご不自由ではありませんか」
 「左平次という隣の鳶の兄いに連れていってもらい、煮売屋とか蕎麦屋で済ませた」
 「そうでございますか。今宵は私めにご案内させて下さい。いえ、なに気のおけない店で、ご
浪人の姿のままが宜しいでしょう」
 気が緩み一伝は午睡した。目を覚まして間もなく池端が呼びに来た。猪牙舟の用意ができたと
いう。
 日本橋川に並ぶ船の間に、先の鋭い細長の舟が繋いであり、清兵衛が待っていた。
 二人が乗り込むと、船頭は巧みに棹と艫を使い、舟は滑るように走り出した。
 「吉川様はどうしてこのようなお役目をお引受なさったのですか」
 清兵衛は抱いていた疑問を真先に聞く。周囲は水ばかり、船頭には聞こえないほどの小声であ
る。
 「すべてを話そう。誤解もあるし、妬みもあった。しかし、心を魅かれたのは、人を殺めずに
辻斬りを押えたいという、生類憐みの令の順守の心であったと思う。
 拙者の父と兄は行方知れずである。しかも陰では大任の為とは囁かれながら、なんの為になに
をするのかということが明かではない。生きていて欲しい。それで自らが人を殺めないという誓
いをたてたのだ」
 清兵衛は大きく頷く。
 「鹿島には御物忌という神の后に比しい女性がいつとも知れぬ昔から奉仕し、輿に乗って神前
へ進む。六人ほどが供をするその道中、物忌に仕える娘に酌の相手をさせようと五人ばかりの浪
人が輿を止めた。その間に割って入り、輿を進めさせて五人を相手にして追い払った。そこまで
は良かった。が」
 一伝はそこで口を閉じた。しかし続けて、
 「物忌の住む屋敷は広い。そこには女性二人だけが住む。男は兄弟のみならず、父とも接しな
い厳しさで暮らす。お物忌という名もここから起る。その夜、拙者は物忌を案じて屋敷の側の椎
の大樹に登り、枝に腰を下して見張りをした。
 無事に夜が明けて、なにごとも起こらなかったことで安心し、樹を下りようとしたとき、物忌
の仕女が手水に入った。
 拙者は聞いてはならぬ清らかな音が聴えてしまったため、前夜を忘れて樹から下りた。その姿
を誰かに見られたらしい」
 「そうでございましたか」
 「物忌様の屋敷を覗いた者がいる。という噂が囁かれはじめた。座主の居候たる私らしいとい
う噂もすぐに弘まった。吉川家は卜部でありながら、寺々の取締りの座主という任務にも当って
いたのでそういわれる。古くからは神宮守護の大任もある。座主の外れ者は鹿島には置いておけ
ないー。
 また、ご正道を謗ることになるが、幕府は神社仏閣の大きなところへは論争の火種を置く。つ
まり一致団結して幕府に叛かぬよう、用心したのであろう。鹿島でも論争の種が絶えなく起り、
訴訟が過ぎて大宮司職は二百石が百石となってしまい、いまは十四歳の則長どのが大宮司である。
大祢宜羽生則貞どのが補佐し、則貞どのから新当流宗家の吉川家にこの話が伝えられたが、神主
同士がかばい合う力も失せているのであろうと思う」
 「大社にお仕えする方のことはよくわかりませんが、吉川様は悪いところは一つもありません
ね。なぜ誤解をそのままに」
 「剣の思惑がからんでいる。自分が一番強いと思う者にとって、拙者は邪魔者なのであろう。
吉川家は本来分家を許さない家系を保っている家だが、江戸へ出る私には吉川の名乗りを許して
くれた」
 一伝は空しさを覚えながらも、反面では自由な天地のある喜びを感じてもいた。



舟は大川から水路にはいり、幾度か曲って富岡八幡宮先の門前東町の河岸へ着いた。清兵衛が案
内したのは「入船」という侘びた茶屋であった。以外にも造りは新らしいようだ。
 川風で冷えた身体が、温められた部屋で和んでいく。暑さ寒さを超えた一伝にも心地良さが感
じられる。仲居が茶を運び、ほど良い茶を喫していると清兵衛が手水から戻り、女将が障子越し
に挨拶をして入ってくる。
 「こちらは高島さんと申される大変お世話になったお方。よろしくな」
 「女将のきよでございます。どうぞごゆるりとおくつろぎを」と如才ない。仲居が酒を運び料
理を運ぶ。

 北 川  吏 ―30才で逝った天才新聞人―『渡辺治の生涯』Vol.2 / 高萩の太陽
金港堂をめぐる裁判

正面に裁判長、左脇に検察官、右に弁護人、証人園前に被告。

裁判長 エーっ、ただいまから教科書疑獄の裁判をはじめます。検事は冒頭陳述しなさい。
検 事 金港堂主人は、島崎藤村などの小説を載せた都の花という雑誌を発行するばかりか、都
    新聞を設立し、渡辺治氏と経営しています。本業は教科書販売で、山田という子会社の
    社長が汽車でカバンから財布を抜き取られ、カバンは品川あたりの、田んぼに捨てられ
    まその書類には代議士、知事、県議、校長が、賄賂を受け取った証拠となるものです。
裁判長 金港堂とやらの庭先で今にも重要書類を焼こうとしたのをとめたといいますが、焼け残
    った書類があつたら証拠として出しなさい。
検 事 これです。
裁判長 これは、少年向けのマンガ雑誌ではありませんか。
検 事 もう燃やしたあとだったのかもしれませんね、
裁判長 これでは証拠になりませんね。弁護側の反対尋問を許します。
弁護側 金港堂氏と、都新聞を経営している渡辺治氏を証人として出します。 
 治  金港堂氏はわたしと、都新聞を立ち上げるのに明け暮れていて、とても、山田氏にそん
    な指令を出すひまはありませんでした。
検 事 裁判長
裁判長 はい、発言を認めます。
検 事 それでは、子会社の社長である山田氏が独断で実弾をばら撒いたということでしょうか。
裁判長 山田氏どうですか。
山 田 まちがいありません。
裁判長 これで裁判を打ち切ります。

法廷、みんな出て行って、治と金港堂の二人となる。

 治  危なかったですな。スケベ教師に贈るワイ本も出てこなかったし、硫酸でボロボロなっ
    た肝心の書類も出てこなかったし。
金港堂 山田には、刑を終えたら、都の花の社長の椅子をやる約束なんだ。 

 大阪毎日新聞社内

渡 辺 私は、衆議院第一回選挙に出るのに、諸国を回り見聞を深めていました。政治は関係な
    いと、福沢先生から時事新報のひまを出されてしまいました。

本 山 その諸国旅回りもいいが、大阪毎日の社長兼主筆をやつてくれないかね。゛、
渡 辺 でも、都新聞の副社長でもありますし、第一回衆議院選挙にも出たいです
し。

渡辺と本山さる


柴 本山が藤田組の仕事で今日は出社しないことはわかっている。渡辺は新橋駅から
一番列車に乗り込み長浜あたりに居るはずだ。
A 今こそこのいまいましい、俺たちの人生の輝きを奪い去り。閉じ込められなんの
喜びも
ない、この大阪毎日を全員で退社しましょう。
柴 君たちもそういうか。まさに、わが意を得たりだよ。そうしようそうしよう。お
れは大坂毎日の台所が火の車であることなどすべてを暴露した退社においてという社
説を書     
き、輪転機が回ってから退社者しようじゃないか。 

柴とAさる。

本山渡辺はいってくる。

行 員 こんなゲラを柴さんがすれって言うんですが。
本 山 自分を首にしたお返しか。
渡 辺 工員さん、輪転機を止めてください、そして活字を拾ってください。今,会社の方針を
    書きます。
    1、主義主張において政党に偏らず、関西実業商工業者のための独立独行の方針を貫く。
    2、東京支局の強化、
    3、地元取材陣の強化 
    4、海外支局の拡充、これがその要旨です。
本 山 渡辺君,やってくれるか。
渡 辺 はい、わかりました
          暗転
木 内 みんな社長の体調をしらなすぎますよ、胸を患っているというのに。週一回休もうとし
    たした社長案をけり、休み知らずでいこうということにしてしまった。社長はそれでま
    すます心血をそそがならなくなり、職場にベッドを持ち込んでまで陣頭指揮とられた。
渡 辺 いや、男は仕事のこと、家庭のことそうしたものに均等分に目を光らせなくてはならな
    いが、すべてを犠牲にして賭けなくてはならないときがある。
渡 辺 君がわが社にきてもらってどんなに心ずよいか。君は自由民権運動で、東京を放逐され、
    茨城に戻り、常総之青年を出し、若いもんにたいそう人気があるそうだね。
木 内 冷やかさないでくださいよ。それにしても、私は社長の体のほうが心配ですよ。
渡 辺 あまり心配しないでくれたまえ。仕事で死ねるなら本望だ、ははははは。

水戸のあるカフェー

 B 渡辺治という候補者はなかなかの人物らしいな。
 C 商業をさらに興隆させるのだといって、有権者に警世私言という自著を配っています。十
   九の若者が書いたにしてはなかなか理論的です。
 D 渡辺はユダヤ人のイギリスの首相で小説家でもあるビーコンスフィールドに心酔していて
   彼が四度めにようやく当選したように、自分も何度でも挑戦する、といっています。。゛
 C その多くの候補者は、演説を一回もせず、自分の主義主張を明らかにしないものも居るら
   しい。。
 D そうそう、、人に書かせたものもいるというけどね。
 C 名をあげたいため、友人知人、小作人、親戚かにかねをかり、ホラを吹くものも居るらし
   い。

鹿鳴館の二階

勲章をたくさんつけた軍人や洋装の夫人が、ワルツを踊っている。奥にシャンペンのグラスなど
がサイドテーブルにのっている。正面には伊藤博文と夫人治と育子が語っている。

伊 藤 おかか、この治君は将来有望な青年代議士だぞ。はじめてあったのは、わしが清国に戦
    争の損害賠償をもらうのに天津条約いったときだったな。
 治  はい。あの時は御膳の交渉力で賠償してもらったんでした。
伊 藤 いやなんのなんの、あのときは清国がフランスと戦争をしていて、余計なことに首を突
    っ込みたくなかったんだよ。いや、運命のようなものだよ。
 治  御膳は運命を信じますか。
伊 藤 そうよな、半分は信じる。しかし、あと半分は人為的なものだと思う。運命は女神だよ。
    女だから引っ張りまわせばなびくわな。わしも若いときは攘夷論者だった開明派に転進
    した。この、運命をつかむのに、用意を怠らないことが大事だよ。
 治  なるほど運命の神は女ですか。
伊 藤 ここに居るかかあもおろそかにしたら、どんな運命に落ち込ませられるかそれが心配よ。
    治君は相思相愛だったそうだが、女子を粗末にしたら天罰が下るぞ。
 治  ほんとうに。
伊 藤 おかか、改進党の大隈さんがやってきたぞ。一曲踊ってこい。
伊藤夫人神様もダンスをおどるもんですかね。
 治  ちょっと、所用をもよおしましたので失礼。

夫人と治退場

伊 藤 育子さんやら、今度箱根の別荘に招待したいがどうじゃな。
育 子 ありがとうございます。でも主人に断りませんと。
伊 藤 治君には、わしからよく話しておくよ。
育 子 困ったことを言う御膳ですこと。(笑いながら)そんな深い仲になったらピストルで御
    膳を撃ち、私も死にますわ。

治もどってくる。

 治  御膳、私は第1回衆議院総選挙で当選し、無所属なのですが、無所属議員を結集して、
    大成会という社交団体を作ろうと思います。
伊 藤 それもいいだろう。自由党と改進党しかない現状では、無所属の力を分散してしまう。
    ひとつにまとめなければならん。君、やってくれるかね。
 治  ここに規約の案があります。
伊 藤 何々、「本会員は、政治上の実際問題を研究し、その結果を持って議院の方針となす」
    ふーむ、なるほど。「いまや人民負担の軽減は財務の急務なりといえども国権の拡張は
    いたずらに行ってはならない」玉虫色だなあ。自由党色が強いとも改進党色が強いとも
    いえない。 
 治  そのとおりです。中立を標榜しているのですから。
伊 藤 もう、第一議会が始まるが、予算編成はもめると思う。大成会はどう動く。
 治  野党の削減案には反対して政府側につきます。
伊 藤 それでこそ大成会。自由党の別働隊としてやってくれたまえ。わしは君に大いなる期待
    をかけているぞ。 

須磨の別荘

 治  もういいよ、育子。結核という病気は、空気感染するんだ。自分のことはじぷんでする
    から。
育 子 そんな切ないことをおっしゃらないでください。私はあなたの妻、死ぬも生きるも一緒
    ですわ。それにまだあなたは二十九、これからじゃあありませんか。
 治  ああ。こうやって目をつぶるといろいろな思いでが走馬灯のように回っていく。十津川
    の洪水のときは大変だったな。股引に浴衣、小枝を払うのに日本刀を持ち、記事を書き
    なぐっては高くつく人力車で送った。あのときのお前のおにぎりの味は、生涯忘れない
    よ。
育 子 本当にいろいろご苦労様でした。
 治  お前の優しさにこうして抱かれていると、夢は思うように叶いしぼんでしまうようだ。
    それを穏やかに受け入れていけるようだよ。
育 子 そんな気の弱いことをおっしゃってはいけませんわ。まけずに病魔と闘ってください。
 治  私たちには子供がいなかった。寺門を養子にしようと思うがどうかね。
育 子 私に異存はありません。
 治  これで後世に私が作り上げたいとしいものを残せるわけだ。ははははは。

                     幕

「高萩の太陽」

茨城県高萩市に住む小田切朝雄という俺の恋人だった佐藤りみは、2002年の9月11日ニューヨー
クにおける貿易センターに爆破事件の犠牲者となって死んでしまった。失ったものは、俺にとっ
てあまりにも大きい、俺は夜な夜な彼女のことを考えている。夜も眠れない、このままでは俺は
どうにかなってしまうのではないか、そういう不安にさい悩まされる毎日である。

ブッシュは、タリバンが糸を引いていたというこの事件の顛末の糸口をたどって、その本拠地を
ミサイル攻撃していた。アメリカはベトナム戦争以来産軍複合体という厄介な荷物をもう一つ背
負い込んでしまい、常に戦争をしていなければならないという状況に追い込んでしまっている。
もっともマンハッタンの中心部にある貿易センターというグローバリゼーションの本拠地みたい
なところを爆破され、その中枢にいるユダヤ人たちは打撃を受けたと言えるのかも知れない、グ
ローバリゼーションが終りを意味するのかも知れないかった。しかし、だからといってイスラム
を許せば世界は彼らの手によって思いのままにされるだろう。

そういう思いを朝雄は持っていた。朝雄は高萩市に住む石工を職業としていた。山で石を切りだ
して東京や大都市圏に送るという仕事をしていたのだった。佐藤りみの父親は佐藤作蔵といい新
しくできるというダムの河川敷に家があった。花貫ダムといっても水道水を引くための浄水場の
ようなものでダムから放流された水は巡回され飲み水となって高萩市市民に配水される。こんも
りした山々が所々にあり、道路が通じていく山奥という感じた。下は田んぼ、山の上に鉄塔が建
っている。461号を袋田の滝の方に行くと恐ろしく高い上に立つに続く緑の山々に囲まれてい
て左は川である。右には満々たる水をたたえ、黒っぽい緑と太陽をキラキラ移しているダムにな
る。熱いコンクリートで箱のような出っ張りから放水している。

俺は2001年の夏、りみに会った。りみは地元の中学校の同級生だった。市役所へ行く用事が
あって、俺は車で出掛けて駐車場にいた、りみは液から歩いて来て、貿易センタービルへ勤める
ための戸籍抄本の写しを取りに市役所へ行く途中だったが、ハイヒールの踵がとれてしまい転ん
でしまった。そしてそれをみとめた俺は
「やぁ りみじゃないか」
と言って声をかけた。
「ああ 朝雄さん」
「何だ何だ 踵が取れちゃったのか 仕方がないなぁ俺の車で送るよ」
「ああ 有り難う 何か私 朝雄さんと会えるなんてラッキー」
「ラッキーだな いやぁー踵が取れるというアンラッキーもあるけどね」
「そうね」
といってりみは
「うふふふ」
と笑った。その微笑みはどんな時にも微笑みを忘れないと言う自分自身の誓いを実践していた微
笑みだった。
「朝雄さん、私ニューヨークで貿易センタービルに勤めることにした」
「ふ〜ん りみは何をやってもうまいからなぁ 学校の成績も一番良かったし 運動神経も抜群
だし何でも出来るしなぁ俺とは違うよ」
「そんなことないわよ 私だって必死で習ったんだから 毎週毎週日本にいる時は英会話の学校
に通ってムリして」
「だけど俺とは違うよ ここの出来が」
と言って朝雄は自分の頭を指した。
「朝雄さん 今でも石切?」
「そう石切 それしかやることないしなぁ だけど 佐藤りみの親父さんダムの計画に真っ向か
ら反対してそのリーダー格らしいな」
「そうなのよ あんな家売り払っちゃえばいいのに。でもダムを造ったからって 東洋電力がそ
の電力を家々には配電するという事じゃないらしいのよ」
「えっ 電気造ってないの あのダムは第二花貫ダムは?」
「そうなのよ 何か東洋工業というのがM代議士と結びついていてM代議士はやくざを使って父
の所に来てる見たい。 父は『先祖代々のこの地を動かすことは出来ない』というと『なんでや
?』とすごむのよ 父は『昔から わしはここで育ち生計を営んできたからだ』と言うと『そん
なの ここでなくてもわしらが何処か紹介してやるがな』と言うのよ 『でも てこでも動かな
い』と言うと 東洋電力は『もう第二花貫ダムを造るのことにGOサインを出してしまった』と
言うの だから『どうやっても父に立ち退いてくれ』ていうのよ でもM代議士はやくざを使っ
て必死にせっぱんしているわ『大の男がこうやって頭を下げているのだからこのままでは済まな
いのよ』とすごむのよ 父はそれでも、うんと言わないの 私はどうでもいいと思うんだけど」

「あ そう ところでりみはニューヨークから高萩へ帰って来て休日はあるんだろう?」
「ええ あるわー一週間ほど」
「じゃぁ 俺がいい所へ案内してやるよ 今はもう春だし 娘っ子が素っ裸で泳いだり出来る所
があって 娘っ子はみんなそこでひがな一日を遊ぶことになっている 花貫渓谷の隣に花貫ダム
があってその隣に花貫湖という湖があるんだ そこはもうポカポカして水も温んでいるし娘っ子
はみんな素っ裸で泳いだりお互いの乳をすすりあったりして遊んでいる。りみもそこへ行って遊
んこいよ」
「ああ そんなとこあるの ぜひ行きたい」
「じゃ 俺が車で連れて行ってやる」
と言って朝雄は車にりみを乗せて花貫湖へと向かって行った。
「あら本当にきれいな所ね じゃ私ここで降りるから」
と言ってりみは降りて行った。
「本当だ 娘が10人程裸で泳いだりしている」
もう7月だ、梅雨といっても日射しが眩しい。
「あら あんた東京から来たの?」
「いえ ニューヨーク」
浅黒く日焼けした全裸の女性が言う
「あんたも裸になりなさいよ私達と水掛けっこして遊びましょう」
「ええ いいわ」
と言ってりみは服を脱ぎ下着を取ると全裸となった。クロールで泳いだり背泳ぎになって乳首を
ポッカリと水の上に出したり下の茂みが水に映ってゆらゆらと藻のようにそよがしているのを楽
しんだ
「私達とおっぱいの吸いっこしましょ」
色白の君代という娘が言う、朝雄はまだ帰らずに木の木陰でその様子を見ていた、りみは君代に
乳を吸われている。茂みに手が届いて激しくりみは喘いだ。
「あら あんな所に男の子が居る」
「引っ張ってきましょうよこっちへ」
朝雄は驚いたが今更逃げることも出来ず娘達のいいなりになってしまった。
赤貝のような性器が目の前で、お尻が朝雄の顔を塞ぎ赤貝が丁度鼻の当たりにあたった。漁師の
素っ裸の娘達に捕らえられ動くことが出来なかった。
「あら 男の子の象徴がこんなに大きくなって」
と君代達が言う
「ここをしごいてみるとさ、あたい達が子供を産んだ時に出る乳みたいのが出るわよ」
君代はりみにしごかせた。朝雄はいい気持になって射精してしまった。すると局部はぐんにゃり
としてしまった。
「あらら もう終わっちゃったわ」
「だけど 何か青臭い変な臭いが」
「何言ってんのよ これがいいんじゃない これを飲んだり あそこに入れたりして 子供が出
来たりすんのよ」
君代が知ったかぶりをして言う りみは
「その辺で 許してあげましょ」
「そうさぁ早く家に帰りなさい」
「ああ りみ、ありがとう じゃ」
と言って朝雄は服を両手に抱いて素っ裸で車へと走って行った。
「いやぁ とんでもない目にあった」
と言って服を着込むと会社の方へ車を走らせて逃げて行った。

この時、佐藤作蔵をリーダーとするダム建設反対の集会が公民館で開かれていた。東洋電力と反
対派の話し合いが行われていた。この模様をKDDが衛生放送をしようとしていてテレビカメラ
を回していた。KDDは山々の上にあり斜面にも家々が立ち並んでいた。山の上にパラボラがあ
る。KDD宇宙通信館入口という所に着く。民家が脇にあって、通りを奥へと進んで行く、緑が
多く広大な高原のようである。木々の間から陽がこぼれて涼しいだろう。樹木と大木が繁ってい
た。衛星通信はアンテナ直径20m、油圧モーターによる方位角傾斜角度回転範囲 360°のもの
だった。これが主なパラボラを代表する仕様だった。光ケーブルで海底を通ったケーブルが海外
へと繋がっている、東洋工業と反対団の団交は模様この衛星放送によって世界中に放映されてい
た。

東洋工業は作蔵達を花貫ダムの下の河川敷のバーベキューに招待した。作蔵達は何かあったらと
っちめてやろうと思って気持を高ぶらせながら出席していた。すると花貫ダムが何かダイナマイ
トのような物で爆破されたのだろう。熱いコンクリートが最初ピリピリと亀裂が走り、その亀裂
から細い水が滲み、やがて吹き出してきた。亀裂が多くなり水が出て始めた。やがて、水が固ま
りのようになって飛び出してきた。物凄い水が作蔵達を砂のように飲んでいった。これは東洋工
業が仕掛けた反対派達への挫折のための工作だった。りみは父を失い傷心のままニューヨークへ
と帰って行った。そして、ああいう事件にあってしまった。俺は余程不幸の星の下に生まれたの
だろうかと嘆くばかりだ。

 星    聖   夜   −運命論を排す−  −国際社会での見通し−
−運命論を排す−

果たして運命論というのは正しいのだろうか。人は努力しても報われないという。たまには報わ
れることがあるかも知れない、しかしそれはほんの何パーセントという奇跡でしかないという。
恐ろしいスピードで物事を成して自他共にそのこと自体は奇跡的な快挙と絶賛するという事があ
るかも知れない。
しかしそれも自分の力でというよりも目に見えない大きな力がそうさせて<れているということ
である
らしい。だから人の世のことは全て目に見えない宇宙の大きな力がコントロールしているといえ
るという、
しかし果たしてそうだろうか、マキャベリは運命論者がいるということを知っている。しかし私
は運命というのは女神であって、女であるかやこそ強引に叩きつけるように引っ張り回せば必ず
打開策が見つかると言っている。そして運命の中では若者の粗暴さと、物事知らない素朴な態度
・視点が功を奏するということがあるといっている。そしてマキャベリは運命を我がものとする
ためにはそれ相応のこちら側の受入れ体制を整えておくということが必要だとも言っている。つ
まり時代のニーズを敏感に捉えて、こちらの受け入れ、後の時代の要請をいつでも受け入れて自
分を変えられる、そういう体制に持って行けと言っている。

ういえば伊藤博文であるが、伊藤は井上がイギリスに行って「海岸防衛などは到底容易でない、
攘夷は国を誤る」と言って伊藤博文に従ったがその攘夷論を捨てるようにと言っているが。これ
には伊藤博文も反発するが伊藤がイギリスを訪れたことによって「海外の大国の文明は素晴らし
く日本など太刀打ちできない」ということで攘夷論を捨て去って西欧の優れた文物を取り入れた
という体勢を立て直している。それだからこそ伊藤は明治政府が成り立った後、外国人掛を命ぜ
られて国会の開設に備えて憲法作成の為に西欧に飛び立って行ったりしている。また伊藤は第一
代の貴族院議長に就任したり首相になったりしている。それも二回ほど首相の座に着いている。
この彼の成功は攘夷論を早い時期に捨て去って、流れを敏感にキャッチして自分をそれに合わせ
ていったということがいえる。
また大隈重信も攘夷論者だったが、蘭学を修業して一人長崎へ行ったり来たり、西欧政府返還の
勉強などをやったりしているうちに開明派となって攘夷論を捨てている。彼は参与外国事務局判
事を任されたり外国官副知事を任せられたり参謀兼大蔵大補になったりしている。このような例
えば明治時代の二人の政治家を見た場合にも早い時期に攘夷論を捨てて外国の優れた点を取り入
れるという全く180度転換した体質に己を体質改善している。

このように自然の流れを敏感にキャッチすることが必要になってくる。高度成長は日本は世界の
工場として利用されただけだという見方もある。そしてバブルが破裂し一時は学生や主婦までも
が財テクに狂いサラリーマンは昼休み証券会社のボードを見るのが日課となっていたという話も
あった。しかしバブルが破裂してその次にきたものはlTでありリサイクルであった。このような
時代の流れを敏感にキャッチして政治家は政策に作成に参考にしなければならない。

例えばゆとりの教育と言う問題がある。
子供の学歴が落ちてきた、先生の言うことを聞かない、それからゆとり教育の弊害が現れてきた
と言うことでアメリカではゼロトラランスという生徒を厳しく躾るという今の日本とは正反対な
教育の方針をとるようになつてきている。昔はアメリカ・イギリスなどはゆとり教育を行ってき
たわけだが、そして日本は厳しい躾を行ってきたその対照的なありかたがここにきて逆転してい
る。日本ではゆとりの教育、アメリカ・イギリスではゼロトラランスという厳しいしつけの教育、
日本は一歩後れを取っているといえる。凶悪犯罪などやキレル子供たちこうした子供たちをアメ
リカ・イギリスなどは発生を防止するためにゼロトラダンスという厳しい躾で蘇生させようとし
いる。このような視点を持つことが大事だろうと思う。

−国際社会での見通し−

国際社会の中で日本はどう見通しを持つべきなのか。ひとつ、厳然たる事実はアメリカの頭越し
には、外交はできないということだ。
 田中角栄は、中東戦争が終わるや否や、石油確保のため、外務大臣を中東に派遣している。あ
るいはウランを確保するため中南米に特使を派遣した。
 もうひとつ大きな点は、アメリカの頭越しに、中国と、国交回復してしまったことだ。キッシ
ンジャーは「田中は生意気だ」といった。これが、ロックフェラーたちの反感を買い、ロッキー
ドで引っ掛けられ、政治生命を失った。

 今、日本の同盟国がアメリカだけというのもおかしな話だ。これでは、この国際時代にアメリ
カとだけしか付き合ってはならないということになる。主人と召使の関係から、せめて兄貴と弟
の関係まで引き上げてもらい、アメリカの人脈を自分たちにも使わせてもらいたいというべきだ。
 アメリカの同盟国はたくさんあり、トルコ、フランス、ドイツ、オーストラリア、イギリス、
ロシア、サウジアラビア、中国、イスラム諸国、韓国などある。

 これらの国に、今日本は、不況で苦しんでいるのだから、不況脱出のため円安にしてください
と、頼み込むとよいだろう。輸出が、円安のため、息を吹き返し、製造業は儲かり、日本がよく
なれば世界もよくなります。こうあからさまに本心を出すと、アメリカは押さえつけにくるに決
まっているから、これらの国に、日本は文化貢献をします、日本の優れた技術と、知識を提供し
ます、と持っていく。向こうから、円安にしろ、と持っていかせるのだ。

 たとえば、福島大学では、外国人留学生後援会、というものをやつています。
@ 奨学金(一時金)の支給
A 生活費の貸し付け(五万円以内)
B 私費留学生への宿舎費補助
C 学生総合共済掛け金の一部補助
D 留学生住宅総合補償の保証人補償基金の加入金の保証
これらのシステムを多くの大学で行えばだいぶ違うと思う。

 西 郷 慎 太 郎(ゲスト)アントラーズ「消える魔球」
俺は横浜マリノスのデイフェンダーだ。名前を軍馬健という。

今日は日曜だったし、特にすることもないので昼飯を食いに中華街へと向かった。よく神社の楼
門などにあるような大それた瓦屋根をつけた中華街と書かれている看板の門をくぐると、珍満と
いう中華料理屋に入って行った。

ここは俺の良く行きつけの店だ。白仙というマスターがいつも俺を温かく迎えてくれる。
「マスター、俺の母親はいつになつたら見つかるかな」
「そうだね 君がお母さんを見つけたいがために サッカーを始めたっていうのは良く知ってい
るよ」
「うんそうなんだ 俺がサッカーをして有名になれば どこかに日本にいるはずのお袋が見つけ
てくれるんじやないかと思って それが俺の望むところの一番の望みなんだ」

「君のお母さんはね 私の知っている限りのことをお話しよう 君のお母さんは悪いが中国人の
娼婦だったんだ 白い大理石ででできた吹き抜けのロビーそして木立の影に隠れたプールそして
階段を上ると客分室があるデラックスなホテルだったよ そこで君のお母さんは憲兵に捕まった
んだ あこぎな奴でね 中国人のお客さんを相手にして春を売ってたんだが二人してアヘンをや
ってたんだ 憲兵が君のお母さんを拉致した そして中国人の男はピストルを乱射して撃ち殺し
てしまった そして君のお母さんはもう客を取るのは嫌だと言ったんだが憲兵はそれを許さずに
一升瓶を口につっこんで水を飲ませた 嫌だというのに無理にだよ 腹がバンパンになって苦し
かったんだろうな。君のお母さんは中国人のために売春をするようなそういう使命を科せられて
しまったんだ。そこヘ1972年9月29日田中角栄は中華人民共和国と国交を結び調印を結んだ 田
中角栄と周恩来首相が署名したんだ だから中華民国台湾とは断絶してしまった。

そういうことがあったんだが君のお母さんはその訪中団の一人とできてしまったんだ あの広々
とした天安門広場では自転車が行き交い 観光客が珍しげにカメラを向けてお互いを撮り合って
いる しかしあくまでも広大でありの一匹ぐらいにしか見えないようなところだがね そして君
のお母さんはその訪中団の一人とできてしまった そういう経緯があるんだ」
「わかりました じゃ私もせいぜいその母親と会うために試合を頑張ります」
「ああ その方がいいよ」
俺はコンサドーレ札幌と横浜マリノスの試合に監督は俺をディフェンダーとして使ってくれるこ
とになった。俺は決して出来の良い選手ではなかった。しかし今日の試合には俺は選手生命を懸
けていた。監督は俺を見放す手前にいたと感じられたからだ。しかし俺はパスを受けたがゴール
手前でミスをしてゴールポストの上をかすめてボールを出してしまった。またもやドジを踏んで
しまった。ドジを踏んだ俺は仕方なくというよりもひろってくれた神様に感謝しなければならな
いが鹿島アントラーズにディフェンダーとして契約することになった。俺はジイジイ氏などに相
談してゴールシュートにむける特殊な秘密兵器を開発しようとしていた。

俺は大洗の海岸へとやって来た。
コーヒー牛乳のような砂に足を取られながらもボールを蹴った。針金のような物を円形に曲げて
砂に突き刺してあった。その針金を何十本も砂に立ててその穴の中へボールを通過させるという
練習をしていた。

これはボールがライトへ出て芝生の上すれすれにボールと飛ばして夜露にぬれた芝生がボールに
その芝生の緑を写すことによってポールが透けて透明になってしまうというそういう仕掛けがあ
る。その消えるボールを開発しようとしていたのだった。
風があり寒い、沖を漁船が行く、そのスピードは速かった。
太陽は真上にある、そしてきらめく波打ち際まで銀色の波が押し寄せていた。人は誰もいなかつ
た。ざわざわという音が聞こえてくる。恋人とでもデ−トを楽しむならいいが。俺は汗みどろに
なって右足が動かなくなるまでその練習に打ち込んでいた。しかし出来ない、ボールは途中まで
行くが全部をすり抜けるとこまでいかなかった。いくらやっても無理だった。やって無理なとき
は何をやってもだめなのか そう思って打ちひしがれる思いだった。
銀座ジャガーズと試合が始まった。アントラーズ対銀座ジャガーズだった。俺はゴール前に。右
サイドに敵が7人ほど集まっていた。三上は広いスペースの左サイドヘパスを出した。そしてそ
のパスを受けた本田が左サイドヘパスを出した.そしてそのパスを受けたジイジイがの後ろから
俺が行ってパスをシュートしようとしたとした。

しかし敵は「お前の母ちゃん出べそ」とか、と聞くにに堪えないヤジが飛ばしてきた。俺はカッ
として頭へ血が上ったと思うと筋肉が盛り上がってきて、とても人間とは見えない恐ろしい獣い
変わっていた。ユニフォームは破れていた、上半身が裸になった。皮膚は緑色をしていた。顔も
緑だ。そして今まで練習しても出来なかつた。消えるボールが俺の右足から炸裂していた。ボー
ルは見事芝生の上をすれすれに飛び、全く見えない状態になっていた。消えるボールが出現した
のだった。敵は驚いた。ボールが消えてしまったからだ。そしてそのボールはゴールヘと真っ直
ぐ貫いていた。ゴールキーパーは驚いたようだった。何しろボールが消えてしまったのだからそ
れをたたき落とすことも掴むことも出来なかった。そしてそのボールは見事にゴールに突き刺さ
っていたのだった。これは俺がいくら大洗で練習しても出来なかつた秘密兵器だったが、本番に
きて思わぬ怒りから超人へと変貌した俺はその練習成果を見事ここで完成させて実戦にと使える
ようになったのだった。

この獣のような俺が中華街で珍満という中華料理を経営していたその白仙さんが二階に部屋を貸
していた王さんという科学者がその研究成果を俺に試してくれたからだった。それは人間の誰で
もある人間の中の獣の成分を抽出して、人間を獣のような恐るべき力を持つ薬を開発してスポー
ツ選手などに注射をすれば無敵の選手が現れるという代物で、俺は注射を王さんから注射をされ
ていたのだった。その効き目がここへ来て現れたと言えた。この注射は興奮しなければその効力
を発揮しない。そういう成分を秘めた注封だった。あと、俺の母親が今日の試合を見てくれて眺
めててくれればいいなと思うばかりだった。

 月 丘 星 人(ゲスト)イギリスルネッサンスの手法であるシェークスピアの肖像  
私がイギリスルネサンスに興味を持ったのはイギリスのロンドンに行ってその古い町並みが現存
しているのを目撃し、あの当時ルネッサンス当時のイギリスにこそ、その本質を今も残して影響
を与えて続けているのではないかとと言う興味があった。

私、大文字太郎は茨城県水戸市にある茨城県近代美術館でイタリアルネッサンス時代の絵画が展
示されるというので出掛けて行った。大洗方面から右が水戸市市街・弘道館方面、左が土浦・笠
間方面、直進が近代美術館となっていた。緑色の屋根、土色の壁の建物が近代美術館だ、左手は
市民文化センターである。綺麗に刈り込まれたツツジが目を引く、階段を上るとガラス張りの正
面玄関に出会った。広々としたロビーの床はモザイク調になっていた。そしてロダンの三つの影
というブロンズ像が置いてある。三人の手を繋いだ力強いしかし苦悩に満ちていた男性の裸像で
ある。(エーゲ海)という木内克美という作家の女性の豊満な画像もある。

そこで私は(ロンドン塔)という一枚の油絵に目が止まった。その他色々あったが何故かそれだ
け心に残るものがあった。そしてこの絵画を出品した大富豪である水戸市の大泉銀一郎という人
の家で笑い仮面という最近その辺に出没している黄金の笑っている仮面を着けた怪盗の出現予告
の手紙が届いた。<今夜12時にロンドン塔を頂きに上がります>そういう文面だった。そして警
察には知らせるなという予告の文面を見た大泉銀一郎氏は私立探偵である私を頼って来たのだっ
た。
「ああ 大文字さん 大丈夫ですかなぁ」
「ええ 大丈夫ですよ私がいればね しかし黄金笑い仮面は何故こんなありきたりたロンドン塔
の絵を欲しがるんでしょうなぁ、」
ロンドン塔がバックにあって ギャーギャーとうるさい鳥が描かれている。そしてその前には赤
い皮の洋服を着たビーフィーターの肖像が描かれていた。このビーフィーターは中世時代にロン
ドン塔の守護を司る役目をもっていたが、給料の代わりに牛肉をもらったという、そこでビーフ
ィーターと言う名前が付いたと言われている。現在でもこのロンドン塔を守っている守りの象徴
としていた。」
「この絵を何故欲しがるんですかなぁ 大文字さん解りませんか?」

「それでは私が解き明かしますよ」
そう言って大文字太郎はポケットからナイフを取り出すといきなりその絵を剥がし始めた。
「何をするんです大文字さん こんな貴重で莫大な値段が付く絵画を」
「ええ このロンドン塔の下にシェークスピアの肖像画が描かれてあるんですよ どうです ほ
ら」
と大文字が剥がしてしまった絵の具の下から現れてしまった肖像を見てそう言った。
「おお これがシェークスピアですか」
「そうです 今まであったシィークスピアの肖像が全て偽物だというその証拠ということになり
ますね その証拠にここにシェークスピアのサインがしてあります」
「するとシェークスピアというのは二人いた訳ですかなぁ?」
「ええ そうだと思いますよ 学校もろくに出ていないシェークスピアが天文学や歴史や哲学な
どをあんなに詳しく分かるはずがないんです ですからあれは幅広い学術を身に付けた別の人の
書いた詩・戯曲だと言えるでしょう」
「ああ ではシェークスピアは単なる役者だったんですかねぇ?」
「そうです エリザベス時代絶頂の華やかな空気に有頂天になっていた哀れなピエロ役者そして
彼は何も描くことはなかったと言えるでしょう」
「分かりました ああもう12時ですなぁ ついに現れなかったなぁ」
「いや そんなことはありません」
そう言って大文字太郎は笑い始めた。
「こういう仕掛けがしてある絵画と本物をすり替えたんです もう私の部下が屋敷から出してま
すよ」
「えっ すると大文字太郎さん貴方が笑い仮面ということになる」
「いやぁ 大文字太郎と言う者はいませんよここには 私が化けていたんです」
そう言うと大文字太郎は玄関へと飛び去り、その時乗っていた部下の車で逃走してしまった。

「ああ よく寝たぞ」
と言ってまた違う大文字太郎が二階から降りて来た。
「お前は笑い仮面」
「いいえ 私が本当の大文字太郎ですよ ついにとうとうやられましたなぁ」
と言って大文字太郎は可愛しそうに笑った。
「しかし犯人はここにいますよ」
「えっ 笑い仮面はここに居る?」
「ええいますよ 今の笑い仮面は単なる代理人でしかありません 本物はここに居ます」
「それは誰ですかかなぁ?」
お手伝いさんと秘書と大泉銀一郎とその奥さんだけしか居なかった。
「それはこの秘書の信子さんですよ」
「えっ 私やってないわ そんなこと」
と、まだ二十歳代の美人秘書はそう言って拒否した。
「いえ 友子さんはお手伝いさんですけど彼女は洗濯した靴下を飛ばされて隣の家の玄関へと物
干し伝に飛ばされてしまったので 返してもらおうと行くと新しく引っ越してきた人はやくざの
家の奥さんで散々脅されたという経験がありますよね」
「ええ ありますわ」
「それで その信子さんは銀一郎氏の選挙用ポスターを貼らせて下さいと頼むとそのやくざが出
て来て『何言うてさらすのや 100万持って来いそしたら貼ってやる』と言ったんですよね それ
をみんなこのお手伝いさんの友子さんに押しつけてやらせたんです。指1本触れてないこの友子
さんを相当虐めていましたね だがその仕返しに笑い仮面のマスクを置いておいたんです その
証拠をお見せしましょうか じゃ全員で行ってみましょう」
「信子さんは友子さんに秘密を握られていたのでアキレス腱を切られてしまうのをいつも恐れて
ビクビクしながら暮らしていた だから友子さんの部屋に笑い仮面のマスクとマントを置いてお
いたんですよ それで友子さんが笑い仮面だということに仕向ようとした だけどそれは今言っ
たように信子さんは友子さんが邪魔だから犯人に仕立てたと言うことであって本当の笑い仮面は
信子さん貴方だ」 と大文字太郎はそう謎解きするのだった。

 赤 川 大 波(ゲスト) モミの冒険Vol.1
 ニューヨークのロックフェラーセンターは、各国の旗をなびかせる高層ビルのあいだにボッカ
リとあいたというか、地下を四角に切り取ったような場所が印象的で、いつもは、若者たちがロ
ーラースケートをして遊んでいる。もうじきクリスマスなので、有名な、巨大なクリスマスツリ
ーがたてられていた。
 あるユダヤの長者が、ロックフェラーのオフィスにやってきて、秘書をとおして面談を申し込
んだ。彼はたまたま空いていて会ってくれることになった。
「突然でてきて会ってもらい恐縮です。こういう者です」
 差し出された名刺にはフルートブランコとあった。全米で有名な企業家である。
「フルートブランコさんでしたか。気が付かずにすみません。ところで゛ご用件は」
「じつは、クリスマスツリーのモミの木に飾る、プラスティック製の、本物を真似た、モミとい
 う熱帯魚なんですがね、これはバプアニューギニアの長老に聞いたら、不老不死の霊薬になる
 とか。モルジブか日本の大洗海岸しかいないといいます。今、あるドデカイ事業を構想中で、
 あなたに出資してもらいたい。そのお礼にモミをプレゼントしたい」

 ここは茨城県の大洗海岸。フルートブランコの手配したダイバーがモミを探しに水中に飛び込
んだ。飛び込んでみると、海の底は、まるでハイビジョンのテレビを見ているようで鮮やか。紫
色をした石の上には、白いテーブルサンゴの団地。窓窓からは紺色やピンクのいそぎんちやくが
顔を出す。モミの集団が遠くを行く、ラッキーにももう出会えた、とダイバーは思ったところが、
恐ろしいものが遠くからやってきた。さめである。2匹いた。見つかる、そう思いながらとっさ
にサンゴの陰に隠れた。1匹のほうが゛尾びれ付近から血を流し始めた。サンゴででもひっかい
たのだろう。1匹が、おいしそうなにおいにちかずいて逝き、横腹をガブリとかんだ。かまれた
ほうもそのまま射るわけではなく、さめ同士のけんかとなった。

またもや深く潜り、辺りは真っ暗となった。背中のほうから、ボーッと明かりがさした。ありが
たかった。しかし後ろを見ると、巨大なチョウチンアンコウがいた.鋭い歯で今にもかみ殺され
そうである。しかし、ちょうちんをナイフで破ると、びりびり体を痙攣させ、感電死してしまっ
た。ビンクのふわふわしたくラゲの集団にぶっ使った。刺されると一命を落としかねない。何せ
大きいのだから。いいことを思いついた。風船みたいなものだから、携帯しているこれまたナイ
フで、頭に穴を開けた。すると、シューと、しぼんでしまった。これならいけるぞ、と、この場
は切り抜けた。

しばらく泳いでいるとやっとモミの集団に出会えた。ところが、体に異常事態が発生した。何か
にのみのみこまれたような振動を感じる。鯨のおなかの中だ。おなかの中はプールみたいで、あ
っちへ吹き飛ばされ、こっちへ吹き飛ばされ、超強烈な船酔いのようである。そうだこの次、鯨
がえさを飲み込むとき、空いた口のスキマから逃出そう、そう思った。それで、それはうまくい
ったのだった。モミたちもなんだろうと思って覗き込んでいた。良心には恥じるが、その中の一
匹を掴みり、アーメンといって、バッグの中に入れた。