小説の茨城  茨城をテーマまたは舞台にした小説集です。小説
 の舞台は、霊峰筑波、徳川光圀公の本拠であった
 水戸、東国の武神を祭った大社を持つ鹿嶋など。
2004年7月号
 
 矢 作 幸 雄  影与力『不殺の剣』Vol.4

 一伝は座敷で愛刀を抜いた。
 父が一伝の許へ置いていった、いわゆる遺品に比しい刀である。二尺七、八寸の大業物を二尺
三寸に磨上げた相州伝であるが銘を残さない。暫し、行燈の明りで刀身に見入る。二回、三回と
振り下して鞘へ納めた。そして刀掛けへ戻す。
 この愛刀には血を吸わせたくない。そのために刀剣商から古びた大小を求め、浪人高島太郎右
衛門差料として、加島屋の隠居所に置いてきている。
 辻斬りは相当な修業を積んだ剣客と見て良い。二例とも右上段から袈裟で、ためらいもなく斬
り抜いている。この袈裟斬りに対して、はたして生命を奪わずに勝つにはどのような技があると
いうのか。
 鹿島新当流は、甲冑着用時の剣を基本にして組立てられている。従って鎧の隙間、甲冑の最も
弱点とされる小手、喉、頸動脈、上帯通しなどを突き、或は切ることによって相手を制するので
ある。
 怒濤の如き袈裟斬りは、甲冑剣法の古流には無い。その袈裟に対してはなにを以て対すべきか。
対すべき技はある。しかし、その技を遣えば相手の生命を落とすことになる。
 戦場では甲冑を着ている。相手の袈裟などは鎧の袖が受け止める。其処から甲冑武道の真髄が
表現されるのである。
 元和偃武よりこの方、古流が忘れられるのは、甲冑着用を前提とした稽古では、到底身軽な新
しい剣法には追いつけないところにあった。
 不殺の剣のむずかしさを、一伝は改めて知った。
 翌日から門を閉じて、屋敷の前庭で一伝は鹿島新当流のすべての技を行った。有馬流などの交
流した流派からとり入れた「外ノ物太刀」も行った。
 数日続けて、繰返して行ううちに、自然と「霞の大刀」以外には対処すべき技がないという結
論に達した。
 新当流の奥義はこうである。
 「身は深く与え、太刀は浅く残して、心はいつも懸りにて在り」即ち、肉を斬らせて骨を断つ。
 「霞の太刀」は七ヶ条ある。しかし相手の生命を奪えないことから三ヶ条は外れ、甲冑を着用
しないことから二ヶ条が外れる。
 「上霞」にはもう一つ。奥の技があった。一伝はこの奥義を用いることにした。正に肉を斬ら
せて骨を断ち、二度と袈裟斬りが行えないようにする。で、辻斬りを反省させることだ。
 大旦那将軍綱吉公の「生類憐みの令」が、それでこそ生きるというものだ。
 一伝は茂平とすみが耕す畑を見に行った。三百余坪の屋敷の傭人長屋の奥に、三十坪ばかりの
畑があり、葱や青菜類が青々と延びてきている。
 「精が出るのう」と声をかける。
 「こうして身体を動かしますと具合が宜しうございますし、殿様にも新しい物を差し上げられ
ますので、一挙両得でございますよ」
 「有難うよ。楽しみにしておるぞ」
 古びた厩が残っている。元和の頃までは馬を飼っていたのであろう。
 慶安二年(1649)の軍役規定では、一伝と同じ二百取りの武士は、侍、甲冑持、槍持、馬
の口取、小荷駄の各々一名を使用、馬一匹を飼わなければならなかった。
 約四十年後の元禄四年では、二百石では馬どころか傭人も二、三名が限度であろう。
 明暦の大火(1657)に火を冠らなかった番町では、以外に古い建物が残っている。その古
い厩に柄の外れた万能の刃が錆びたまま残っていた。土を掘り起こすもので、三本の長い爪が頑
丈に延びている。備中鍬とも呼ばれているものである。
 一伝は手にとってみた。ずっしりと重い。木の根なども掘り起せる丈夫な出来である。表面は
錆びてはいるが、芯は損傷しているわけではない。おそらく畑を作るときに使い、柄が外れた頃
はもう万能が不要になったのであろう。
 「これなら使える」
 一伝は大きな味方を手にした気がした。
 「茂平よ。この万能は不要ならば使いたいのだが」
 「なにをなさるかわかりませんが、もう木の根は起すことがございませんので」
 「そうか。では貰っておく」
 翌日、編笠を冠った着流しの武士が、神田鍛冶屋の店先で風呂敷を広げ、古びた万能を取出し
て、なにやら頼み、前金を渡して帰っていった。

 一伝はすべての方策が整った。
 大番頭中根大隅守正延の屋敷を訪れ、詳細を言上した。大隅守は、
 「そうであったか。そのような気配りをせねば相手の生命を救えぬものか。大儀であるのう。
明日、早速柳澤様には申し上げるであろう」
 「どうぞ宜しく、お願い申し上げます」
 「お主を旗本に迎えたこと、まことに嬉ばしい。無事果し畢るのを願うぞ」
 「はっ。有難く存じ上げます」
 大番頭の一言は百萬の味方に等しい。

 吉川一伝は、辻斬りの原因であると思われる二大名の改易について調べをしなかった。
 辻斬りに対処する動きが洩れないよう、要慎するに越したことはない。が、この二件だけとは
限らないとも思っているのである。
 元禄元年に二人の側用人、そして二年には武蔵国喜多見藩二万石喜多見重政が御側用人の要職
にあって、親戚の殺人事件に連座して改易された。生類憐みの令を遂行するため犬大支配役を勤
めるなど、将軍綱吉の親政に貢献したが、その努力も空しかった。憾むとすれば喜多見藩士こそ
立上がり、わざと「元禄元年の恨みぞ!」といったのかも知れない。
 一伝に託されたのは、辻斬りの生命を奪うことなく、二度と凶刃を振えないよう仕置きするこ
とのみである。
 一伝は相手の剣の流派についても、深く考えようとはしなかった。いかに秘しても、右からの
袈裟斬りは隠すべくもない。どの流でも右袈裟は右袈裟である。一伝は相手と刀を交えるつもり
はなかった。だから、静かに刻の過ぎるのを待つばかりであった。

 
 星    聖   夜

イラク戦争の泥沼化

 イラク戦争を短期決戦でかたをつけようとしたにもかかわらず、泥沼化している。多国籍軍は
占領軍は撤退すべきだといっている。ブッシュは国連に泣きこもうとしている。NATO軍出動
してもらい助けてもらおうとしている。

 アメリカ、イギリス、イタリア、韓国、日本、の兵士を捕虜にして、撤兵要求という戦術を取
り始めた。
 戦争の恐怖心を取り除くため、このように、これからの戦争は、相手を殺すのではなく、一人
に対して何人かでかかり発砲するのではなく、捕虜にするという方式をとるとよいとマキャベリ
は、いっている。
 もちろん日本もそうだが、敵国もそうでなくてはならない。戦争は殺し合いではなく捕虜の交
換でなくてはならない。これが新しい戦争のありかただ。

イラク問題について

ブッシュはイラクに対して、ハイテク爆弾や劣化ウラン弾を雨あられとぶち込み足腰立たないほ
ど打撃を与えた。そして二千四年五月一日、大規模戦争終結宣言を出した。マキャベリは、短期
決戦がよい、金人物を消耗せずにすむ。
 ブッシュも短期決戦でこの戦争に望んだ。しかし、イラクの過激派は爆弾を腹に巻いて、自爆
テロを繰り広げていった。占領しようと思ってもさせない。しかし、占領軍を置くということは
正しいとマキャベリはいっている。同地で思いがけない事件が勃発しても占領軍が管理していれ
ば未然に防げる。
 そういう意味では、ブッシュは正しいのだが、イラクに悪感情を抱かせたという点ではマイナ
スだ。マキャベリは、占領するのならその国の人民に理解してもらいよいイメージを持ってもら
うことが必要だといっている。
 その意味では、日本の自衛隊は人道支援でありイラク人民に好意を持ってもらうという意味で
はアメリカの援護射撃になったろう。

英雄は抜擢すべきだ

 今の自衛隊に功績を上げたものへの褒賞は特別に考えなくてはならない。
 フリーメーソンという組織があるが、これはJFケネディ以前からめんめんとつづいていた、
ブッシュは太平洋戦争で名誉の負傷を負ったし、ケネディは、仲間と、沖をとおる船に見つけて
もらうため救命具をつけ沖で船を待った。大統領候補のJFケリーべトナム戦争で五つの勲章を
もらっている。恐ろしい体験もしたことが伺うかがえる。今のブッシュはお父さんに頼んでベト
ナム戦争から回避している。
 このように戦争で勇敢に戦ったものや、名誉の負傷の経験をもつものが大統領の条件だ。
 これを自衛隊に応用できないだろうか。わずかな給料て゛危険な目に会う。その功績をたたえ
て、自衛隊員から大臣に迎えたり、政府の中で特別な名誉ある仕事を与えるべき。

有事立法の考え方

北朝鮮などが攻めてきた場合、これを防衛するためにも成立を急がなければならなかつた有事立
法だがこういうことだ。
 武力攻撃の手段を用いて多数の人を殺傷する行為が、発生した場合に当てはまる。空港、交通
機関、原子力発電所にあてはまる。破壊工作を想定したものだといえる。これに対して、陸、海、
空軍を動かせる非常大権を総理が握っている。
 しかし、これは総理が握るのではなく天皇が握るべきだ。大日本帝国憲法のようにすべての権
力を一身に帯び、まわりの愚にもつかないたわごとを、無視できる。
 それにもし、戦争をしたら、それなりの最高責任者がいて、四六時中戦争のことを考えていな
ければならない。寝てもさめても戦争戦争と、そればかり考えていることが必要なのだ、とマキ
ャベリはいつている。だから日常業務をしながら、戦争をどう進めるかは決められない。だから、
首相も、天皇も、かなりしんどい仕事になるのではないかと思われる。

憲法改正の考え方

 現在越党派で憲法調査会がずいぶん活躍して、そのたたき台はできている。日本が、個別的集
団的にかかわらず、、憲法九条において、戦争放棄の条文を残しておいて、非常権を付け加えて
いる。
 交戦権の否認をうたう九条二項は。全面的に削除する。変わって、陸海空軍の存在を明文化す
る。そして、この軍隊は、自衛権行使のほか、国際貢献にも活用する、とあるが、非常権などと
回りくどいことをいわず、海外で戦争はしませんと入れるべきだ。
 これまた別の条項で、国を守る義務の規定を設けるとされている。海外での国際貢献は総理が
その非常権を握っている。
 ここで思いつくのは、天皇制にしてしまえばいいということだ。日本国憲法は、アメリカに与
えられたもので、日本人の総意を結集して独創的に作った根のではない。
 天皇を元首にする。ロシヤさえ打ち破った強大なエネルギーはどこからでたか、天皇陛下から
出た。以下第日本帝国憲法を抜粋しよう。
  
 第一条(国家統治権)
大日本帝国憲法は萬世一系の天皇之を統治す

 第三条「神聖―不可侵」
天皇は神聖にして侵すべからず。

 第四条「国家元首」
天皇は国の元首にして統治権を持ちこの憲法のこの規定によりこれを行う。

 第十一条「軍統帥権」
天皇は陸海軍を統帥する。

軍隊を天皇の判断で動かすばかりでなく、すべての権力を集中する天皇制に移行するだろう。そ
れがまた日本らしい国に見えるに違いない。
  
 第一条(国家統治権)
大日本帝国憲法は萬世一系の天皇之を統治す

 第三条「神聖―不可侵」
天皇は神聖にして侵すべからず。

 第四条「国家元首」
天皇は国の元首にして統治権を持ちこの憲法のこの規定によりこれを行う。

 第十一条「軍統帥権」
天皇は陸海軍を統帥する。

軍隊を天皇の判断で動かすばかりでなく、すべての権力を集中する天皇制に移行するだろう。そ
れがまた日本らしい国に見えるに違いない。

教育改革について

教育改革は、子供たちにその矛先を向けるだけでなく、教師のあり方を暴かなければならない。
たとえば国歌斉唱、国旗掲揚、という問題があるが、これはもう法律で決まったものであり、歌
を歌わなかったり、起立しなかったりするものは、犯罪者である。
 しかし、「起立せよ」と、特高警察のように怒鳴りつけるのはいただけない。名前を控えてお
いて、左遷させるとか、卒業式、入学式をぶち壊さないようにする。あとは、教師養成所などを
作って、たとえば、二十四の瞳の大石先生のような子供を愛するとはどんなことか、教えるとか
すればいい。

これからは多極化の時代

A 日本はアメリカについているのだからイギリスとも仲がよくなれるかも知れない。

B ヒトラーと組んで戦った過去を持つドイツだがアメリカのやり方に批判的なので難しいと思
  われる。

C あるいはフランス、ロシアこれらはちんぷんかんぷんで過去を調べても何も出てこないので
  はないのだろうか

D これからはアメリカ、イギリス、日本と、ドイツ、フランス、ロシアの三極化になる。
 
 東 天 紅  和 也(ゲスト) 水戸城

ここは水戸城。徳川頼房が江戸へ行って、城を守るのは家老だった。そして時は流れ、後継ぎに
問題が出てきた。光圀、光圀の兄が浮上していた。しかし、光圀は、支那で書かれた本を読み、
その能力によって、兄、弟の差を付けないほうが良いという一文を読んだのであった。だから、
むしろ自分よりも兄のほうを案じ、兄に家督をついでもらいたかったのだった。
 ところがである、その光圀が、藩主になることを賛成する連判状が、光圀の寝室に桐の箱に入
れて置いてあったのだった。それを、どこからか忍者らしき者がかぎつけ、「本当は光圀は悪い
人ですよ。」と連判した人々につげる材料にしようとしていた。しかし、周囲にいる人間には、
とてもではないがそういう暴挙はできなかった。
 屋根をすすすっと走る者がいる。上様の寝室まで滑り込んだ。そして、巻物を奪い、その城の
植木の縄を掛け、滑り降りていった。そして、おほりに飛び込んだ。しかし、こんなものがなく
ても光圀は藩主になる人望と能力があり、心配なかった。もちろん連判状は、竹の筒に入れてぬ
らさぬようにしていた。これで、光圀は藩主になることが決まったのだった。
 
 若山 今日太郎 (ゲスト) ウィルスバスターズ

パソコンのウイルスにかかっていないパソコンはないというほど、ウイルスが跋扈している。
 マリーの勉強部屋。マリーは高校1年生だが、模擬試験とか進学のための勉強とか、非常に忙
しい。毎日毎夜、寝るのは12時ごろだった。そしてコーヒーでも飲もうと思って、ドアのノブを
開けようとした。すると開かない。体当たりしても駄目だ。もちろん鍵は掛けていなかった。
「何よ、これ。ママ、助けて」、マリーはママを呼んだ。しばらくすると、窓のガラスをたたく
音がする。ママだった。「このガラス戸を開けて、このテラスのそばのヘリを通って、非常階段
でおりるのよ」
 マリーは、非常階段のところの手すりを握った。するとグニャンという音と感触がする。ウイ
ルスだった。青いミミズのような、頭も顔もない、しっぽもないような奇妙な生き物だった。こ
れがコンピュータウイルスというものか。こんなものが入られたら、コンピュータなんて手も足
も出ないわね。「さあさあ、早くおりるのよ」と、ママが言う。「はい」。
 すると道路に出た。あっちからもこっちからも人がやってきた。ここは公園に近い。それだけ
に人が集まる緊急避難場でもあった。
「私の家のコンピュータウイルスがにょろにょろとパソコンの中から出てきて、部屋中ウイルス
でいっぱいなのですよ」、中年の男が言った。「私もそうなんです。ウイルスが家から道路へに
ょろにょろはい出して、道路がウイルスでいっぱいですよ、この先は」。「ああ、あれは何です
かな」道の真ん中に大蛇がにょろにょろやってきた。「ああ、あれはウイルスとは違うんじゃな
いか」、男が言う。「いえいえ、あれはウイルスだよ。化け物化したウイルスに違いない。きっ
とそうだ。きっと異星からやってきたウイルスの仲間に違いない。地球をウイルスでいっぱいに
しようという魂胆なのだな、あいつら。それだったらウイルスバスターを使って、一網打尽にし
てやろうじゃないか。きっとそういう会社があるよ」。
 携帯から、ある男はウイルスバスターズを呼んだ。ウイルスバスターズはヘリコプターでやっ
てきた。「いや、この街はすごいですね、ウイルスで。まあ、任せておいてください」と言って、
背中にパソコンを背負って、吸い寄せ機を取り付けたコードを、吸い取り機に取り付けて、ウイ
ルスをパソコンの中に閉じ込めていった。その作業はずっと続けられたが、1週間ほどたってウ
イルスはキレイになくなった。

(ゲスト) 黒船

茨城県の那珂湊の沖合に黒船が現れた。みんな珍しがって怖いどころではない。黒船見学ツアー
なるものを仕立てて、黒船の近くまで行って、近くで、異人を近くで眺めたいという者がたくさ
んいて現れた。近くで見ると、異人は血を飲んでいるという。恐らくワインのことなのだろうが、
あの背丈の高く、髪の毛ももじゃもじゃして、まるで赤鬼のような異人を見て、楽しんだりして
大騒ぎだった。
 黒船に、夜一艘の船が向かっていった。長田松陰の乗った船だった。どうやら近くまで来たよ
うだった。異人は長田を見つけた。「カモン」と指を差して、指を打って、長田に上がるように
と勧めた。この黒船は長さが40メートルぐらいで、黒くぬった輪が力強く回るたびに執拗に波を
立てていた。大砲が4門、両方向に動くようになっている。長田は、息絶え絶えにも豪華VIP
ルームに通された。壁に取り付けてあるソファーがふわふわする。ツートンカラーでそろえられ
ていた。
「ああ、キャプテン博士、ここの船の船長ですね。私は異国へ行って、新しい優れた学問を身に
つけたいのです。どうぞこのような私たちをあなたの国へお連れください」
「いや、それは駄目なんだ。幕府と私の国とで書面を交わしている。人を乗せてわが国へ連れて
行くことは禁止されている」
「でも、これがばれれば私は切腹ものです。そこを何とか」
「いやいや、そなたはここで打開策を考えたら良かろう」
「ああ、キャプテン博士、陸では、浜辺では、楼閣が建って、遊郭が建って、男を楽しませる女
性がたくさんいますよ。自由恋愛ですから、どこを歩いても構わないんです。それも全部わが藩
で賄いますからご心配なくと言っていましたよ。私はそんな権限ないが、私の上司がそう言った
んです。そういう計らいをしている日本です。私を連れて異国へ旅立ってください」
「いや、ならぬ」
「それでは私は帰ります。そして浜辺で切腹します。おい、山岡、介錯頼むぞ」
「あなた方、本当に死ぬつもりか。」
「もちろんです」
「じゃあ船員たちと一緒に陸へ出て、思いを遂げれば良かろう」
「はい。でも私は一番後にします」
「ああ、いいとも。」
 みんな陸に下りてしまって、長田はこの黒船の中で一人になってしまった。すると長田松陰は、
船の操縦法を知っていたらしく、沖へ沖へと船を走らせていった。「おーい、何をするんだ」、
キャプテン博士どは大声で呼び止めた。長田松陰の腕はさえて、沖へ沖へと出ていった。そして、
ボカーンという音がした。船は木っ端みじんに砕けてしまった。ああ、長田はいかに。
 大丈夫である。長田は水泳の名手で、みんなが集まっているほうと反対の方へと泳いでいって
陸へ上がった。これで、長田松陰の外国遊学は達成されなかったが、日本にはこういう暴れん坊
がいるということを知らせただけでもいいと長田松陰は思った。
 
 諸 星 好 子(ゲスト) マザーグースのコーヒーショップ

              マザーグースのレストラン

 水戸の三の丸。ここは昔、水戸城があって、それなりの権勢を水戸城下に放っていたのだった
が、現在では三の丸小学校のいかにも城ふうの壁、あるいは今NHKなどのカルチャーセンター
などという風景。元県庁、堀が掘ってあって、池の後ろには県立図書館がある。この土地だが、
あまりにも広かった。そこで、ある東京の大金持ちが、この土地、駐車場を水戸市から、県から
買い受け、マザーグースはコーヒーショップを開いたのだった。コーヒーショップといっても少
し変わっている。マザーグースは仕事をやめていた。。今はキャッシャーをしていた。
 まず1階に入ろう。ここは照明が落としてあって、足元にもつまずくくらいだ。まず明るい照
明が、それでも足元を照らしてくれ、安全を確保してくれた。1階目の手すりには、ラブラブの
一組がいた。縫いぐるみを着たバニーちゃんも、くまのプーさんも遠慮して寄りつかなかった。
そのずっと離れたテーブルでは、人待ち顔に時計をちらちら見ている中年の紳士がいた。恋人で
も待っているのだろうか。タバコを吸おうとすると、バニーちゃんはライターで火を付けてやっ
ていた。1階目のこのカップルは、コロンビアを飲んでいた。丸い酸味と甘さが特徴がある。こ
の紳士の飲んでいるのは、強い味わいが印象的なキリマンジャロだった。
 2階では、今やショーが始まろうとしていた。立派な紳士姿。シルクハットにちょうネクタイ
を締めフロックコートを着、ステッキを脇に握っている。それが、ベッドに横たわる娘さんの前
に出ると、急に青い肌色に変身し、凶暴な性格をむき出しにし、娘さんにかみつこうとした。そ
こへ前から、こういうこともあるのだろうと雇われていた私立探偵がやってきて、ピストルを構
えた。男は窓から逃げていった。
 ラブラブのカップルがいた。彼らが飲んでいたのは、恐らくコロンビアだったろう。丸い酸味
と甘い香りが特徴なのだ。いかにもスイートな感じの飲み物だ。次に奥のほうへ行くと、ああ、
次にキャッシャーのほうへ行くと、誰かを待ち続けているような青年がいた。恐らく彼の意中の
人だったのだろう。恐らくキリマンジャロを飲んでいたのだろう。アフリカを代表する豆で、非
常に酸味が強く、苦々しい思いをした人などが飲んでいたのだろう。
 2階では、時刻になるとショーが開かれる。これでゴリラとライオンの血みどろの闘いが今開
かれた。ゴリラの手をライオンがかみ、引きちぎろうとした。ゴリラは負けじとライオンの頭を
拳で殴り付けた。ライオンの歯が離れた。ゴリラはライオンの横っ腹をけりつけた。するとライ
オンは、またゴリラに飛び付いた。今度は強烈だった。さすがのゴリラも参ってしまった。
 ショーが終わった。すると客はみんなこの店を出る。出るときが変わっていた。ジェットコー
スターなのだ。貨車に乗り込むと、緩やかな坂道を上っていき、楽だなと思っているととんでも
ない。落下すると、ものすごいスピードで強烈に蛇行しながら落下していく。客はみんな「ふー
」と言ってため息をついた。